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株式会社日立総合計画研究所

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電子記録債権

所属部署:経営システムグループ
氏名:近内 洋仁

「電子記録債権」とは

本年、3月14日に法務省および金融庁より「電子記録債権法案」が第166回通常国会に提出され、6月20日に参議院本会議で可決、成立し、2008年末の施行が予定されています。
「電子記録債権」とは、電子的に権利を記録することによって、権利の発生・譲渡・消滅などを完結できる新たな債権です。法的には、「(1)電子記録債権を発生させる原因となった法的関係に基づく債権と別個の金銭債権であって、(2)当事者の意思表示に加えて、電子債権記録機関が作成する電子債権記録原簿に登録しなければ発生および譲渡の効力が生じない債権であって、(3)指名債権・手形債権など、既存の債権とは異なる類型の債権」と定義されます。つまり、企業間取引などで発生した債権を、電子債権記録機関の記録原簿に記録することにより、電子記録債権として利用することが可能になり、譲渡したり、分割したり、電子的に権利を行使し、自由に流通させることが可能になります。

「電子記録債権」への期待と新たなビジネスの可能性

現在、さまざまな分野で情報技術の活用が進み、わたしたちを取り巻く環境が大きく変わろうとしています。電子記録債権も、情報技術を活用することによって実現する新たな金融インフラサービスです。電子記録債権制度の創設によって、なかなか活用が進まなかった企業が有する債権(受取手形、売掛債権…)の利用が促進され、中小企業金融の活性化(不動産担保や個人保証に過度に依存した融資からの脱却)、市場型間接金融の拡大(銀行に過度に偏重した資金調達構造からの脱却)といった産業金融の機能強化と発展が期待されています。
では、電子記録債権制度が設立されると、どのようなビジネスが実現するのでしょうか?まず、紙であるがゆえに敬遠され、残高が減少している既存の手形に代わるものとして、(1)手形の電子化が期待されています。そのほか、(2)一括決済サービスの電子化といった企業間決済への適用、(3)CMS(キャッシュマネジメントサービス)といったグループ企業間決済への適用、(4)融資の電子化(シンジケートローン)、(4)債権流動化や市場型間接金融の促進、(5)電子商取引の決済ツール、(6)3PL(サードパーティー・ロジスティックス)事業者の金融サービス提供ツール…など、企業のさまざまな経済活動の中で電子記録債権が活用されることが期待されています。

「電子記録債権」の今後の課題

法施行を一年後に控える電子記録債権ですが、ビジネス化までには、まだまだ越えなければならないハードルがあります。特に、(1)電子記録債権を運用するにあたっての共通ルール(約款および業務規定)の策定と(2)広く利用される記録機関の設立が求められています。
また、電子記録債権の幅広い利用が進むためにも、利用者が安心して利用できる高度なシステムを構築しながら、利用コストをできる限り低く抑えること、さらに、参入事業者の採算が取れるような事業性の確保も念頭に置いて電子記録債権制度を創設することが重要な課題です。今後、安心、安全な電子記録債権制度の検討がさらに進むとともに、今まで可視化できなかったさまざまな情報やデータが、電子債権記録機関の記録原簿に記録され、権利として広く流通・取引され、いろいろな場面で活用されることが期待されています。

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