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株式会社日立総合計画研究所

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オイルサンド

所属部署:技術戦略グループ
氏名:高野 理樹

オイルサンドとは

オイルサンドとは、石油成分を含む砂岩のことで、主にカナダの中西部、アルバータ州北部で産出されています。その主な組成は砂83%、水4%、石油成分10%となっていますが、含まれている石油成分は非常に粘性が高く、常温では半固体状の超重質油です。そのため、石油成分を回収し輸送するためには加熱処理などにより流動性を高める必要があります。天然ガスを燃焼させて熱源とするなど、オイルサンドの採掘後の処理にコストがかかりますが、その一方で、地下3,000m以上の深度に埋蔵されている通常の石油に比べて、オイルサンドの大部分は地下1,000m以下と浅い深度に存在しているために採掘コストは低く抑えられることが大きな特徴です。
こうしてオイルサンドから得られた原油は、通常の原油と同じように流通しており、さまざまな石油製品に精製されたり、原油としてパイプラインで米国に輸出されたりしています。カナダでは多くの企業がオイルサンドの開発を行っており、海外からの参入も、ここ数年非常に活発になっています。中国から国営石油会社のペトロチャイナやシノペックが、韓国からコリアナショナルオイルがオイルサンド事業を展開しています。2007年12月にはオイルメジャーの1社であるイギリスのBPがカナダ企業と合弁での参画を表明し、すでに事業化している4社(ロイヤル・ダッチ・シェル(蘭)、エクソンモービル(米)、シェブロン(米)、トタル(仏))を含めて5大メジャーすべてがオイルサンド事業に携わることになります。

オイルサンドが注目されている理由

オイルサンド産業では、生産量の拡大によって予想される、大気や水資源など地球環境への悪影響の可能性が問題視されています。 大気への影響に関しては、工程に必要な大量の熱を天然ガスの燃焼により賄っているために、温室効果ガスを多く排出することが挙げられます。オイルサンドから原油を得る際の温室効果ガス排出量は、通常の石油生産から得る場合と比べて3倍もの量になります。

表1.原油1バレル生産あたりの温室効果ガス排出量(CO2換算) 資料:PEMBINA研究所公表資料より日立総研作成

表1.原油1バレル生産あたりの温室効果ガス排出量(CO2換算)
資料:PEMBINA研究所公表資料より日立総研作成
石油生産 オイルサンド
28.6kg 85.5kg

今後のオイルサンド産業の成長に伴い、温室効果ガスの排出量は加速度的に増加していくと予想されています。オイルサンド産業に携わる各企業は排出量削減対策に迫られており、ハスキー・エナジーなど大手15社は、西部カナダ堆積(たいせき)盆地域での二酸化炭素地中貯留プロジェクトを推進するなど、二酸化炭素回収・貯留技術の開発を急いでいます。また、カナダのアルバータ州政府は、2008年1月に発表した新気候変動計画において、2050年までの排出削減目標2億トンの70%に相当する1.4億トンの対策を、このような二酸化炭素回収・貯留技術で賄うとしています。
水資源への悪影響に関する対策も、重要な課題として取り組まれています。オイルサンドから原油を得る工程において、大量の水が使用されます。使用される河川水の大部分は、アルバータ州に流れるアサバスカ川から取水され、使用後の水はリサイクルされるものの、河川から新たに補充される水量は一日あたり100万〜230万バレルにも及びます。アサバスカ川は、流域の農業やそのほかの産業用途や生活用水としても利用されていますが、取水枠(州環境省が許可するアサバスカ川からの取水量の割り当て)のうち3分の2をオイルサンド産業が占めており、オイルサンド産業の拡大に伴う他産業への影響も懸念されています。またオイルサンドからの排水は、ナフテン酸と呼ばれる有毒な有機物やアルミニウムや銅などの鉱物を多く含むために河川への放流が禁じられ、「Tailing pond」と呼ばれる貯水池に貯留されており、周辺土壌の汚染も懸念されています。このような水資源の減少、有毒物質による汚染といった問題への対策として、業界では、水を利用せずに石油成分を回収する技術、高効率の水リサイクル技術、また、水だけでなく有価物を回収する技術など多くの新規技術の開発に積極的に取り組んでいます。

オイルサンドが注目されている理由

オイルサンドが注目を集めている理由には、以下の三つが挙げられます。
一つ目は、2002年前半より始まった原油価格の高騰による事業採算性の向上です。近年の原油価格がオイルサンド事業の採算ラインである1バレルあたり30〜40ドルを大幅に超え、約120ドル(2008年4月22日時点の高値119.90ドル)の水準で高止まりしているという背景があります。
二つ目は、オイルサンド埋蔵量の豊富さです。世界の石油需要が拡大し、石油資源の枯渇も懸念される中、カナダのオイルサンドの確認埋蔵量は約1,740億バレルと試算され、世界の石油埋蔵量の約15%を占めるといわれています。これは原油確認埋蔵量が世界第1位のサウジアラビア(約2,640億バレル)に次ぐ規模です。
三つ目は各国のエネルギー政策の変化です。その背景としては、石油や天然ガスなどの安定供給確保に向けて、輸入源の多様化が進められていることが挙げられます。例えば日本は原油輸入のほとんどを中東諸国に依存していますが、原油産出国による輸出規制や政情の不安定化などによって多大な影響を受けるリスクを有しているため、地政学リスクの低い国々からの輸入拡大が課題となっています。

オイルサンド産業の今後

オイルサンドからの原油生産量は急速に増加しており、CAPP(Canadian Association of Petroleum Producers:カナダ石油生産者協会)は、2015年には2006年実績の約3倍となる日量300万バレル超に達すると見込んでいます。このように、オイルサンド産業は近年活況を呈していますが、一方で現在大きな転機を迎えています。
2007年10月にアルバータ州政府は、ロイヤリティー*1を原油市場価格の変動に応じて引き上げるという新たな政策を発表しました。このロイヤリティーの枠組み変更は、オイルサンドだけでなく在来型の石油産業、天然ガス産業にもそれぞれ適用され、3業界が政府に支払うロイヤリティー増加分は2010年度だけで14億ドルにのぼると試算されています。 ロイヤリティー引き上げに対してエネルギー業界は一斉に反発していますが、州政府は、すでに2016年までの期間従来のロイヤリティー制度で州政府との契約を結んでいるオイルサンド業者シンクルード、サンコールに関しても、例外なしとして新ロイヤリティー制度に従うように話し合いを進めており、2009年1月からの施行を目指しています。
このロイヤリティー引き上げ政策の影響により、エネルギー関連企業の株価は一時暴落しました。企業は、天然ガス使用量を抑えたオイルサンド回収技術を導入するなど、原油生産コストの削減を進めようとしていますが、事業採算性の悪化による新規プロジェクトへの投資の減少や技術開発投資の低下による環境対応の遅れなども予想され、今後のオイルサンド産業の発展に関して引き続き目が離せない状況になっています。

*1
資源開発権の対価。事業期間にわたって開発者が州政府に継続的に支払う。

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