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株式会社日立総合計画研究所

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「旬」なキーワードについての研究員解説

植物工場

所属部署:技術戦略グループ
氏名:田中 崇

植物工場とは

「植物工場」とは、「施設内で植物の生育環境(光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分、水分等)を制御して栽培を行う施設園芸のうち、環境及び生育のモニタリングを基礎として、高度な環境制御と生育予測を行うことにより野菜等の植物の周年・計画生産が可能な栽培施設」(農林水産省・経済産業省「農商工連携研究会植物工場ワーキンググループ報告書(2009年4月)」より)のことです。つまり、栽培に適した環境を人工的につくり計画的に植物を生産するシステムを意味します。 「植物工場」は、閉鎖環境で太陽光を使わずに環境を制御して生産する「完全人工光型」と、温室などの半閉鎖環境で太陽光の利用を基本として雨天・曇天時の補光や夏季の高温抑制技術などにより生産する「太陽光利用型」とに分けられます。国内では2009年4月現在、50カ所(完全人工光型:34カ所、太陽光利用型:16カ所)の「植物工場」が稼働中で、その主な運営母体は食品メーカー、外食産業、ベンチャー企業です。また、建設会社や電機メーカーも参入しています。
日本における「植物工場」実用化への歴史は、1974年に日立製作所の中央研究所で先駆的研究が開始され、その後、1985年に筑波で開催された「国際科学技術博覧会」で日立製作所が「回転式レタス生産工場」を展示したことで話題となりました。

「植物工場」が注目を集める理由

現在日本の農業は(1)外国産食材の安全性への不安から生じた安全・安心な国産食材を求める消費者意識の高まり、(2)温暖化による天候不順などに大きく左右されない食材供給への期待(例えば平成16年は10個の台風上陸によりレタスなどの価格が高騰しました)、(3)少子高齢化による農業人口の減少、などの課題に直面しています。「植物工場」はこれらの課題に対してそれぞれ、(1)農薬不使用での栽培および高いトレーサビリティーの実現が可能、(2)環境を人工的に管理でき安定供給が可能、(3)ITとの連携による自動化・省力化により労働力確保が比較的容易などの利点があるため、解決策として注目を集めています。
農林水産省と経済産業省は2009年1月に「農商工連携研究会植物工場ワーキンググループ」を設置し「植物工場」普及について本格的に議論を始めました。同ワーキンググループ設置に併せて経済産業省の庁舎玄関に「植物工場」が設置されました。その後平成21年度補正予算においては、「植物工場」における野菜生産コストの3割削減と植物工場設置数の100カ所増を目標に約146億円が計上されました。

「植物工場」の課題およびその克服の方向性

「植物工場」普及に向けては、(1)設備の建設費用および光熱費や保守費用などのランニングコストが高い、(2)温度・湿度・光量などの栽培環境の調整に関するノウハウが必要、(3)土を利用しない養液栽培であるため栽培可能な品目が限られているなどの課題もあります。しかし、これらの課題は製造業など異業種の技術を導入することにより解決可能であると考えられます。例えば、建設費は「植物工場」の標準化・モジュール化により低下することが期待され、ランニングコストは、ボイラーなどの代わりにヒートポンプを温度管理に、LEDを光源に利用することで抑制可能です。加えてLEDは波長のコントロールにより光合成の効率を高めたり害虫を防いだりできる利点もあります。栽培ノウハウは、センサ技術によりベテラン農家の農場の環境データや、作業者・農業機械などの作業実績データを収集し、栽培環境調整のタイミングや程度を定量的に分析し共有することで獲得可能です。また、バイオ技術を用いた品種改良によって栽培可能な品目を増やすことも期待できます。

異業種融合と内需型産業の育成

このように「植物工場」は安全な食材を安定的・計画的に供給できる点が注目されていますが、将来は、農業(内需型産業)に製造業(輸出依存型産業)の技術を導入し、新たな内需型産業の育成につなげる「異業種融合」の成功例となることが期待できます。現在日本は輸出依存型成長経済からの構造転換を求められており、このような産業・技術融合的な取り組みによって国内産業を一層活性化していくことが重要です。そのためには、製造業が持つものづくりのノウハウを活用することの重要性が増していくと考えられます。

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