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株式会社日立総合計画研究所

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藻類バイオ燃料

所属部署:産業グループ
氏名:菊川 篤

藻類バイオ燃料とは

藻類バイオ燃料(Algae biofuel)とは、藻類を原料として生産されたアルコール燃料や合成ガスのことです。化石燃料である石油はいずれ枯渇する可能性が高いことから、バイオ燃料は主に自動車や航空機の輸送用燃料の代替燃料として期待されています。

石油の起源については諸説ありますが、光合成によって植物や藻類から生産される有機物が酸素の少ない海底などの場所に堆積(たいせき)し、長い年月をかけて石油へ変化したと考えられています。藻類を利用してバイオ燃料を生産することは、地球が何億年もかけて作った石油を、科学の力により短時間で効率よく生産する革新的なプロセスであるといえます。

藻類バイオ燃料への期待

2005年〜2008年にかけて石油価格が高騰した際、トウモロコシやサトウキビなどの穀物を原料としたバイオ燃料の研究開発・実用化が進みました。しかし、穀物系バイオ燃料の需要が急増した結果、食料価格が高騰したこと、栽培に広大な土地が必要で、農業機械を動かし肥料、農薬、水などを投入するために非常に大きなエネルギーを必要とすることが問題となりました。そのため、穀物系バイオ燃料は代替燃料として適さないという意見も多く、米国などでバイオエタノールの生産に多額の補助金が投入されていることに強い批判が集まっています。2009年の主要国(G8)農相会合では非穀物系の次世代バイオ燃料を開発推進することが共同宣言にて採択されました。
非穀物系バイオ燃料の原料として、有力な候補の一つが藻類です。表に示すように穀物などの陸上植物を原料とする場合、1ヘクタール(ha)当たりの年間オイル生産量(面積収率)はアブラヤシの6.1キロリットルが最大であるのに対し、微細藻類では47.7〜143.1キロリットルと数十倍の面積収量とすることができ、効率の良い土地活用が可能となります。また、藻類を使用することで、通常の農業では使用できない耕作地が使用可能であり、穀物との競合を避けることができること、培養する際に排水、塩水などを利用することができるなどの利点もあります。


表:原料の種類によるオイルの面積収量比較
資料:Thomas F.Riesing(2006)「Cultivating Algae for Liquid Fuel Production」より日立総研作成

商業化では米国の後塵を拝していますが、日本でも藻類バイオ燃料に関する研究は盛んになっています。JX日鉱日石エネルギー(旧 新日本石油)、日立プラントテクノロジーとユーグレナの3社による共同研究や筑波大学、豊田中央研究所、デンソー、出光興産などからなる「藻類産業創成コンソーシアム」が発足しており、研究・実用化の検討が進められています。


有機排水を利用したオイル生産を可能とするオーランチオキトリウム

2010年12月に筑波大学で開催された「第一回アジア・オセアニア藻類イノベーションサミット(The 1st Asia-Oceania Algae Innovation Summit)」にて筑波大学 渡邉信教授らの研究グループにより発表されたのが、オイル生産効率の高い藻類「オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)」です。オーランチオキトリウムの特徴はその増殖スピードにあります。これまで検討されてきたボトリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii、以下ボトリオコッカスと略す)は増殖スピードが遅く、オイル生産コストは1リットル当たり約800円であり、1リットル当たり約50円の重油と比較して高コストでした。しかし、オーランチオキトリウムは、オイル含有量はボトリオコッカスの3分の1にとどまるものの、ボトリオコッカスの36倍の速さで増殖するため、オイル生産効率は単純計算でボトリオコッカスの12倍となります。
オーランチオキトリウムは光合成を行わない従属栄養生物と呼ばれる藻類で、周囲の有機物を取り込むことでオイルを生産します。そのため、下水などの有機排水に対して活性汚泥としてオーランチオキトリウムを投入することで、オイル生産と同時に水の浄化ができる可能性があります。
下図は筑波大学 渡邉信教授が提唱する排水処理とオイル生産を兼ね備えたシステムで、主な工程は以下の通りです。

1.家庭や工場から出る有機排水に含まれる固形物を凝集沈殿させる
2.得られた一次処理水の中にオーランチオキトリウムを投入し、オイルを生産する
3.オイル抽出後の二次処理水に対し、ボトリオコッカスを用いた光合成によるオイル生産を行う

有機排水中の有機物除去を行う際に、有機物を栄養としてオイル生産を行うオーランチオキトリウムと、光合成によりオイル生産を行うボトリオコッカスを、段階的に使用することでオイル生産効率を高めた点にこのプロセスの特徴があります。また、オイルを抽出した後に残るオーランチオキトリウムやボトリオコッカスは、メタン発酵に利用したり家畜の飼料とすることができます。


資料:各種公表資料より日立総研作成
図:筑波大学 渡邉教授が提唱する排水処理とオイル生産システム

実用化へ向けた課題

筑波大学 渡邉信教授によるとオーランチオキトリウムによるオイル生産の実用化は、10年後をめどに実現する見込みです。実用化に向けた課題は、図に示した「培養」「収穫」「抽出」「精製」を含め、さまざまな工程にあります。
例えば「培養」ですが、微細藻類はあらゆる場所に存在するため、ほかの種類の藻類が混入し、繁殖しないようコントロールし、オーランチオキトリウムのみを培養することは容易ではありません。また、藻を培養装置内で攪拌(かくはん)する際に多くのエネルギーが消費されるため、最適な培養システム・培養装置を設計しなければなりません。藻を収穫し、オイルを抽出する場合にも、エネルギー消費を抑えたプロセスを構築する必要があります。
藻類バイオ燃料を実用化するためには、今後大規模商業化に向けた研究開発と実証(RD&D)が必要であり、米国エネルギー省が行っているような官民一体となった規格や基準作りなどの支援が求められます。
現時点では、技術的な課題は多く存在しますが、藻類を原料とするオイル生産を排水処理プロセスに適用することができれば、排水処理の省エネルギー化と輸送燃料代替の両面で、日本のエネルギー自給率の改善に貢献し、世界におけるエネルギー資源の偏在に対する解決策の一つとなり得る可能性を秘めています。

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