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株式会社日立総合計画研究所

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復興庁

所属部署:研究第四部 社会・生活グループ
氏名:根本 茂之

復興庁とは

2011年6月に成立した「東日本大震災復興基本法」を受け、東日本大震災後の円滑かつ迅速な被災地復興に向けた要の役割を果たすことを目的として、2012年2月に復興庁が新設されます。内閣府同様、他省庁より一段高い位置付けの下で内閣を補助する総合調整事務および個別の実施事務を行うとともに、「復興庁設置法」や「復興特別区域法」および「復興財源確保法」をも統括する権限を併せ持ちます。

複数省庁にまたがる課題を調整し、予算を含めた復興政策を一元的に統括することが主な役割となりますが、最大の特徴として、被災自治体の各種要望や申請手続きを一本化させた「ワンストップ対応」および複数省庁の復興事業や予算要求を一元管理する「総合調整機能」の2点が挙げられます。また、復興特区申請や要望においては、復興庁の出先機関である復興局が一元的な窓口となります。

東日本大震災は広域的かつ複合的災害であり、自治体の事務負担軽減のためにも、復興庁には役所の縦割りを超えた人材確保やサポート体制の構築、および地域性や採算性、将来性を考慮した積極的な計画策定支援が期待されます。

過去の復興推進体制と地域主導の重要性

過去の災害時における復興推進体制を振り返ると、1923年9月に発生した関東大震災では、首相直属機関として「帝都復興院」が設置されました。同院には計画局や土地整理局、土木局などが置かれ、各省庁から技術者を集め、国主導による大規模な復興計画の策定、都市計画事業の執行、その他復興関連施策が実施されました。その結果、広大な土地区画整理や主要街路および橋梁整備など現在の東京の都市インフラ整備に大きな成果を残しています。 1995年1月に起きた阪神・淡路大震災においては、「阪神・淡路復興対策本部」が設置されました。復興にあたり、「帝都復興院」のような国主導の計画策定を求める声も挙がる中、地域主導による計画策定および実施の下、国がその後方支援を行う「復興委員会方式」が採られました。兵庫県が公表した「復興10年総括検証・提言データベース」*1における検証テーマ「復興体制−復興の推進体制」によると、自治体が復興計画を作り、「阪神・淡路復興対策本部」が関係省庁や自治体と密に連携し計画実現を支援する仕組みは、大都市直下型の震災規模に見合ったものであり、被災地のニーズに柔軟に対応したことで住宅や港湾の早期復興の成果につながったとされています。

東日本大震災における復興庁も、阪神・淡路大震災同様、地域主導の復興理念をベースとしています。日本経済新聞社産業地域研究所が都市計画やまちづくりなどの有識者に行った、東日本大震災後の復興のあり方に関するアンケート調査*2によると、地域の構造は被災地ごとに全く異なるため地域主導の推進体制で進めるべきとの意見が49%を占め、国が復興対策へ積極的に関与すべきとの意見33%を上回っています。この例からも、復興庁の掲げる地域主導の理念は一定の評価を得ています。

さらに、今回のような過去に類のない広域的かつ複合的な大規模災害においては、ひとつの自治体では解決できない課題も多く存在します。これら課題の解決を通じた地域の長期的復興のためには、先に挙げた地域主導の理念とともに、国による継続的な支援体制の確立がより必要となります。このことからも復興庁に求められる役割は、帝都復興院のような国主導の計画策定に基づく支援ではなく、国の基本方針の下、自治体の自主的な取り組みを尊重した財政面、制度面における枠組み構築と言えます。

また、復興庁は設置後10年以内の解散が規定されていますが、今後の日本の危機管理体制を考えるとき、アメリカ「連邦緊急事態管理庁(FEMA)」やロシア「非常事態省」にみられる、関係機関相互の連絡調整機能強化や予算を含めた危機管理体制の一元化に役立てる専門機関の平時設置を検討すべき時期にあるのかもしれません。

表:日本の大規模震災における復興推進体制

  東日本大震災 阪神・淡路大震災 関東大震災
所管組織 復興庁 阪神・淡路復興対策本部 帝都復興院
設置期間 2012年2月〜最長2021年まで 1995年2月〜2000年2月 1923年9月〜1924年2月
主な特徴 ・自治体手続き・要望の現地(復興局)での「ワンストップ対応」
・省庁間の予算要求・配分を一 元化する「総合調整機能」
・政府が自治体の計画策定・および実施を支援する「復興 委員会方式」 ・大規模な復興計画策定
・都市計画事業の執行
計画策定
・実施
自治体主導 自治体主導 国主導

資料:各種公表資料より日立総研作成

本格化する復興まちづくりに向けて

被災自治体では、人口減少や過疎化、少子高齢化および雇用環境の悪化などに伴う生活不安が影を落としています。それら課題の解決につなげようと、スマートシティやコンパクトシティの導入の動きが自治体の復興計画においてみられ、取り組みの具体化のため既存法制度の規制緩和や税制支援、土地利用計画の変更および復興交付金事業といった復興特区の活用が今後展開されていきます。

また、被災自治体では、通常の住民サービスに加え、被災者支援や生活インフラの拡充、地域防災強化のほか、集団移転などにおける住民との合意形成など膨大な事務負担に追われています。今後は本格的な復興需要の顕在化も想定され、復興事業が本格化すれば事務負担は一段と増加します。現代の都市計画は異なる価値観を持つ多数の市民の合意形成の上に成り立ち、その実現には多くの財源や時間および長期的な地域デザインが必要です。復興庁として、「ワンストップ対応」および「総合調整機能」のメリットを最大限生かし、自治体が復興事業を円滑に進めるためのサポート体制および自治体との密なパートナーシップ構築の動きが注目されます。

*1
兵庫県企画県民部防災企画局復興支援課「復興10年総括検証・提言データベース」
https://web.pref.hyogo.lg.jp/wd33/wd33_000000126.html
*2
「日経グローカルNo.174」2011年6月20日

参考文献

大西隆「人口減少時代の都市計画 まちづくりの制度と戦略」 ?学芸出版社 2011年

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