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株式会社日立総合計画研究所

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CBTA(越境交通協定)

研究第四部 国際グループ
氏名:小林 麗

I. CBTAとは

CBTA(Cross Border Transportation Agreement、越境交通協定)とは、メコン地域の越境交通円滑化に関する多国間協定で、アジア開発銀行(Asian Development Bank、以下ADB)の支援のもと、2003年にメコン地域5カ国(ベトナム、カンボジア、ラオス、タイ、ミャンマー)と中国の6カ国が署名しました。 CBTAは17の付属文書と3の議定書の合計20の文書から構成されており、現在までにラオス、ベトナム、カンボジア、中国はすべての文書の批准を終え、タイ、ミャンマーは一部の文書を残し批准を終えています。

II. ソフトインフラの障壁の削減を目指すCBTA

国境をまたがる輸送の円滑化には、道路や橋などのハードインフラの整備と同時に、法制度などのソフトインフラの整備が重要です。CBTAは、このソフトインフラの整備を目指すもので、具体的にはシングル・ストップ/シングル・ウィンドウの税関手続き、交通機関に従事する労働者の越境移動、検疫などの各種検査の免除要件、越境車両の条件、トランジット輸送、道路や橋の設計基準、道路標識や信号に関する事項などについて規定しています。
例えば、国境での検査には検疫、税関などさまざまな手続きを、出国と入国の二度行う必要があります。CBTAのシングル・ストップ/シングル・ウィンドウはこれらの手続きを簡素化した上で、一度で可能にする仕組みです。また、タイのトラックがラオスやカンボジアに乗り入れる際には、密輸を防ぐため、通常国境で荷物の積み替えが必要となりますが、CBTAにより荷物を積み替えることなく越境車両の相互乗り入れが可能となります。さらに、タイからラオスを通過してベトナムに輸送する際、CBTAのトランジット輸送の取り決めにより、経由国(この場合ラオス)での通関、検疫手続きが免除されます。

III. 実際の運用には課題が残る

このようにCBTAが完全に実施されれば、国境をまたいだ輸送における法制度面の障壁は削減されるはずですが、6カ国の署名が完了してから10年近くたった現在でも、CBTAが十分に実施されているとは言い難い状況です。日本ロジテム(株)の調査によると、2012年3月に行われたバンコクからハノイまでの実走実験では、第3メコン友好橋を通るルート(1,429km)の場合、総所要時間は38.5時間であり、そのうち実走行時間は31.1時間に対し、タイとラオス、ラオスとベトナムの2つの越境手続きにかかった時間は7.4時間でした。CBTAが完全に実施されれば各国境での手続きにかかる時間は30分程度に短縮される見通しですが、まだ完全には実施されておらず、越境手続きに長い時間がかかっているのが現状です。
CBTA実施にあたっての第一の課題は、CBTAを各国の国内法へ取り込むことに時間がかかっていることです。例えば、タイの公務員はタイの法律により他の国で業務を行うことが認められておらず、隣国と共同で通関業務を行うシングル・ウィンドウ実施の障害となっています。これを改善するには国内法の改定が必要ですが、政府内のセクショナリズムや通関職員の既得権益の問題など、法改定に向けた国内の調整は難航していると言われています。また、第二の課題は、通関の現場での改革です。例えば、英語を母国語としない通関職員が20もの文書からなるCBTAの内容を理解するのに時間がかかっているといわれています。また、通関業務の24時間化も必要です。さらに、通関手続きのICT(注)化も重要で、手続き書類の電子化、品目コードの共通化、貨物へのICタグの取り付け、共通のICタグ読取機の設置などがADBなどの支援を受け検討されています。

IV. メコン地域の連結性促進に向けて高まるCBTA実施への期待

ミャンマーの経済対外開放の進展や、2015年に予定されているASEAN経済共同体(ASEAN Economic Community: AEC)の発足などにより、メコン地域の域内貿易の活性化に注目が集まっています。現在、メコン地域の長距離輸送は海上輸送が大半を占めていますが、CBTAが完全実施されれば、バンコクからハノイまで海上輸送で10日〜2週間かかるところを、陸上で2〜3日で輸送が可能になり、輸送時間の大幅な短縮が期待されています。陸上輸送の利便性の改善は、陸続きのメコン地域の連結性を飛躍的に向上させることになります。署名から多くの時間を費やしてきたCBTAですが、CBTAの完全実施を目指し、各国の連携が加速することが期待されています。

(注) ICT : Information and Communication Technology

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