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株式会社日立総合計画研究所

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トランザクティブエナジー

所属部署:研究第三部 エネルギー・環境グループ
氏名:山田 洋佑

1.トランザクティブエナジーとは

直訳すると、“商取引できるエネルギー”となります。発電事業者から電力需要家まで全ての電気に関わるステークホルダーが電力・情報通信網でつながっていて、電力系統全体の安定を担保しつつ、市場取引を軸として、電気の最適な流れが作り出されている状態のことを表します。このトランザクティブエナジーという言葉は、2010年、米国の実業家Dr. Cazaletにより提唱されました。まだその実現に向けた議論をしている段階ではありますが、すでにThe GridWiseR Architecture CouncilやTransactive Energy Associationといったトランザクティブエナジーに関する団体も存在しております。加盟者数も拡大傾向にあることから、実現に向けた期待の高さがうかがえます。

2.トランザクティブエナジーが実現した社会

電力売買の自由化が進んでいる米国や欧州では、電力需要に対し供給量が逼迫(ひっぱく)すると、需要家に対し電力消費の抑制を依頼するデマンドレスポンス(需要応答)という手法で電力系統の安定化が図られています。しかし、この手法では、需要家は自ら消費を抑制する手動操作が必要となり、対応までに時間もかかってしまいます。
トランザクティブエナジーが実現された社会では、発電事業者、送電事業者、配電事業者、電力需要家などの各ステークホルダーが保有する発電機器や電力を消費する機器がリアルタイムかつ自動的に情報を交換し、電力系統全体の最適化が図られます。電力の利用者に対して特別な操作を要求することはありません。系統全体の動的制御により、火力発電や原子力発電だけでなく、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギー、家庭における太陽光発電、コジェネレーションなどの分散型小規模発電から得られる電力も有効活用されることで、循環型社会の実現が加速していくと考えられます。
電気料金は、火力発電なら燃料費、再生可能エネルギーなら天候などの要因を加味した価格が市場取引により合理的に決定されます。それによる価格変動リスクをヘッジするための先渡し取引やスポット取引も活発になることが予想されます。

3.トランザクティブエナジー実現に必要なこと

トランザクティブエナジーの実現には、

1.電力売買の自由化
2.電力の使用状態がリアルタイムで分かるスマートメーターなどのICT技術
3.発電事業者、送配電事業者、需要家を相互に結ぶネットワーク網
4.電力の需給状態を判断し、電気の流れを決定できるシステム
5.電力取引を俯瞰する情報交換プロトコル
6.発電事業者、送配電事業者、需要家といった各プレーヤーとプロトコルとを接続するインターフェース

などの制度変更、ソフト面、ハード面の技術が必要ですが、これらの多くが実現しつつあります。例えば、現在検証が進められている「米国太平洋岸北西部スマートグリッド実証プロジェクト」(2010年〜2015年)ではIBMのiCS(Internet-scale Control System)というシステムが使われています。iCSは、電力需要家からの消費予測信号と発電事業者側からの供給予測信号から、電力需給を最適化し、発電コスト、電力量、間接費およびインセンティブに基づき、電気料金を自動的に決定するシステムです。
一方、トランザクティブエナジーが実現された社会においては、電力に関する情報通信網がサイバー攻撃を受け、システムダウンしてしまった場合、大規模停電へと発展する危険性もはらんでいます。こうした事態を回避するための危機管理体制をどのように構築していくかという議論も今後必要になってくると考えられます。

4.日本はトランザクティブエナジー実現に向かうか?

日本では、2016年に電力小売全面自由化が始まります。HEMS(Home Energy Management System)やBEMS(Building Energy Management System)など電力の「見える化」技術、効率化技術が普及し始めています。今後さらに再生可能エネルギーの普及が進めば、系統全体における電力安定化のための電力最適制御やそれに伴う市場取引のニーズが高まっていくと予想されます。日本においても、トランザクティブエナジーに向けた議論が今後活発になっていくと考えられます。

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