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芦山の姿
日立総合計画研究所
銭 蔚

「不識芦山真面目、只縁身在此山中」。これは、宋の詩人である蘇軾氏の名詩である。芦山を観ても本当の姿は見えない。芦山は芦山の中にいるからである。揚子江の南に位置し、江西省にそびえ立つ芦山は、中国の五大名山には入っていないが、有名な避暑地として、広く知られている。

中国には、ノーベル文学賞候補にもなり、“My Country and My People(わが国とわが国民)”という作品で世界的に知られた林語堂という作家がいる。彼は1895年、中国の福建省に生まれ、上海のセントジョンズ大学を卒業後、米国のハーバード大学とドイツのライプチヒ大学に留学した。彼の傑作の多くは海外に滞在している間に、英語で書かれたものである。林氏は、若い頃、上海の教会大学に入ったため、欧米文化一辺倒の教育を受けた。欧米の古典文化は熟知しているのに、中国の古代神話は知らない。しかし、林氏は、ドイツに留学している間に、中国という国に惹かれ、中国の文化や歴史、語学を再勉強した。その後、林氏は、北京大学の教授となり、中国文化を海外に紹介する第一人者となった。

筆者も1993年に中国の上海から日本へと夢を探しにやってきた。最初は、日本という「新大陸」に興味津々であった。それまで全く見たことも経験したこともないものが、目の前に現れたのだから、興奮するのも当然であった。その後、13年間日本で生活したので、次第に周りに見えるもの、起きていることが、全て当たり前のこととなり、来日当時の新鮮さや好奇心は薄れていった。

ところが、昨年の7月、上海に赴任することになり、状況は一変した。日本を離れると、逆に日本への未練が強くなった。上海は現在近代化が急速に進んでいるが、日本の1970、80年代に似ている。光化学スモッグが毎日のように発生しているが、上海気象庁は、毎日空気の質を一級と発表しており、どういう基準で出しているのか定かではない。そうした時には、東京の澄んだ空気を懐かしく思い出す。また、通勤ラッシュの時、上海の地下鉄は間隔が長いため、列車が来ると、駅員のプッシュが無ければ、乗れないほど混み合っている。そのような時には、東京の山手線におけるラッシュ時の1.5分間隔の調整技術を思い出す。中国国営銀行で日本円を両替する時、銀行員の無表情の顔とあたかも無限に続くかのように感じる待ち時間をじっと耐えている時には、日本の銀行員の笑顔が目の前に浮かんでくる。

立場と角度を変えれば、結論も変わる。同じ会社に、長年在籍すると、周りに起きていることへの感度が薄れる。慣れるより怖いものは無い。時には、ものを見る立場と角度を変えたら、新しい見方や考え方が浮かんでくるかもしれない。経営者も、時には自ら会社を離れ、外部から自分の会社を見つめ直す機会を持つ必要があるが、それは簡単ではない。ただし、芦山の外にいる人に意見を聞くという方法はある。日立総研は、経営者とは別の視点から、芦山の本当の姿を眺めている。経営者の皆さん、今度そのような意見が必要になった時は、日立総研に問い合わせをしてはいかがだろうか。

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