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中国の就職戦線事情
日立総合計画研究所
銭 蔚

日本から上海へのJALの飛行機の中で、上海の新聞の朝刊を読んだ。二つの記事に目を奪われた。一つは、中国河南省の省都である鄭州市では、学生が就職説明会場に殺到し、エスカレーターまで壊してしまったという報道。同記事の隣には、上海松江の大学城で就職説明会に数万人の学生が殺到した、とある。この就職説明会では、求人5,000件(ポスト)に対し、数万人の学生が殺到し、会場は一時騒然となったという。

2002年2月から始まった日本経済の景気拡大は、戦後最長の58カ月となり、1965年11月から57カ月も続いた「いざなぎ景気」を超えた。二年前から日本の就職戦線にも異常が起きた。90年代後半まで長引いた就職氷河期と比べると、状況が一変し、買い手市場から売り手市場に変わった。企業は人手不足を叫んでいる。

中国経済も90年代に入ってから、ほぼ年々二桁の成長率で伸びている。しかし、学生の就職状況は経済の伸び率とあまり関係がないようである。2006年11月8日、中国政府が発表した「労働と社会保障事業発展計画要綱2006-2010」によると、中国の人口に対し労働者求人指数は低く、今後5年の間に就職難の傾向がますます進むという。2010年には中国の総労働人口は8億3,000万人となり、そのうち大学新卒など新たな労働人口の総数は5,000万人。しかし求人は4,000万人程度と予測されるため、実質1,000万人が就職できないという計算になる。

1997年に、中国は、大学教育制度の改革を行った。エリート教育を目指した大学運営方針から国民全体の質の向上にかじを切った。それを契機に大学の入学率は大幅に上昇した。以前のように、「万人過独木橋」(数多くの受験生は一つ狭い丸木橋を渡る)という強烈な受験戦争がなくなった反面、卒業生の就職問題が起き始めた。以前は就職先が国に保障され、国家機関幹部の候補生であった大卒は、今や市場にあふれており、限られたチャンスを奪い合う。

2006年の上海市の大学卒業生は、およそ13万人で、就職率は、91.38%であった。2005年と同じ水準を保っている。その中、修士と四年生大卒の就職率はそれぞれ96.66%と91.56%となっている。このままで計算すると、上海では、約12,000人の大卒が就職できていないことになる。一方、大学生の初任給はやや下がっている。買い手市場においては、大卒の初任給は大体2,000元前後(日本円で約3万円)となっている。コンピューター、通信など人気のある専門学生は平均より少し高いが、それでも、大体4,000元(日本円で約6万円)にとどまっている。数年前の「369規則」(大卒3,000元、修士6,000元、博士9,000元)という大学卒初任給が右肩上がりの時代とは対照的となっている。しかし、就職難の時期に突入しても、転職率は、依然として高止まりしている。今の学生は就職後、直ちに自分の特徴と能力にふさわしい理想の職場が見つかるという幻想を捨てた。彼らは、「就職第一、適職第二」という迂回(うかい)戦略を活用し、就職後2、3年目の転職を目指している。中国に進出した外資系企業は、今後、いかに人材流失を引き止めるかが、大きな課題となる。

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