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塞翁が馬
日立総合計画研究所
銭 蔚

2006年9月7日に、北京の新東方教育技術有限公司(株式会社)は、米国ニューヨークのナスダックで上場を果たした。応募価格は、一株あたり15米ドルであるが、取引開始20分後、株価は急上昇し、結局終値は22.45米ドルとなり、その日の取引を終えた。新東方学校の創立者である兪敏洪氏は、会社の31.18%の株式を所有しており、今回の上場により、愈氏は、少なくとも10億人民元(150億円)のキャピタルゲインを得た。

兪氏は、1962年江蘇省生まれ、1985年北京大学卒業後、教員として、大学に残った。当時の留学ブームに惹かれ、渡米を決意した。しかし、兪氏は米国大使館に数回も査証を拒否された。1993年兪氏は、北京大学の職を辞め、新東方学校(以下、新東方と省略)という留学予備校を設立した。彼は自分の受験経験に基づき、「GRE単語ダイジェスト」という本を出版した。カバーは赤い色のため、受験生はそれを文化大革命時代の毛沢東の赤本のように取り扱い、留学組の必携書となった。また「一回の授業中に3回も学生を大笑いさせる」という彼の授業理念も、学生たちの英語に対する興味を引き起こした。

10数年の歳月が経った今日、新東方は、中国の24箇所で25の学校、13の直営書店と5,000の販売代理店を持っており、2005年には学生の数は、87.2万人となった。中国国内市場シェアにおいては、新東方はKaplanとPrinceton Reviewのような外資系の教育機関を抜き、ダントツのトップとなっている。今では、欧米の有名大学に留学中の中国人学生の70%は新東方で学んだ経験があるという。新東方は中国の「留学生の揺籃」と言われている。

その一方、80年代に兪氏が査証発給拒否の苦い経験を味わった頃に、渡米の夢を実現した人達は、2000年以降、続々と帰国し始めている。しかし、彼らは、中国に戻った後も、中国の現状を理解せず、海外で勉強したものをそのまま活用しようとして、壁にぶつかっている。結局、最近では中国国内では、「海待」という新語が誕生した。意味は、海外から帰国した人は、中国で仕事を待っている、探しているという意味である。

中国の古典書籍「淮南子」に「塞翁失馬」という四字熟語がある。日本語で言うと、塞翁が馬。時代により、勝利者に関する基準が変わる。いちいち目の前の利益や成否などにこだわると、前進することができなくなり、将来のチャンスも失われる。人間は、長い目で達成目標を定めると同時に、時代の変化にあわせ、迅速に自分の目標を調整する臨機応変な戦略をとる必要もある。God helps those who help themselvesという英語の諺語がある(神は自らを助ける者を助ける)。兪氏の物語は、まさに中国ドリームを実現した数多くの中国人の代表であり、努力すれば、必ず実るという実例である。

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