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「中国の競争力」と「挙国体制」:現状と問題点(その1)
復旦大学国際関係・公共事務学院
副教授(博士) 陳雲

中国製品を「価格競争力」から「技術競争力」へ転換させるための課題

ある外国の友人はかつて筆者にこう言った。「中国は13億もの人口がいる。その中から11人を選び出して、サッカーをやることはたやすいことではないか?中国がサッカー強国にならないはずがない!」事実、中国では多くのサッカーファンが存在しており、国家体育総局の幹部と中国サッカー協会の幹部も、中国サッカーが「アジアから走り出して、世界で輝く」ことに熱心である。しかし皮肉なことに、中国の挙国体育体制は中国を「メダル大国」にすることに成功したが、「体育強国」にすることには全く成功していない(あるいは、もともと目標になっていなかった)。同じように、挙国経済体制のもとで、中国はGDPでは、すでに経済大国、貿易大国になっているが、「経済強国」、「貿易強国」ではないことも自明である。その反映として、国際的「総合競争力」ランキングにおける中国の地位はなかなか上昇しないのが現状である。

世界経済フォーラム(WEF、World Economic Forum)とスイスのLausanneにある国際経営開発研究所(IMD、International Institute for Management Development)は国際競争力について評価を行う二つの権威ある機構である。WEFが発表した「2005国際競争力報告」によると、中国の世界競争力ランキングは第49位であり、前年度より3位後退した。2006年にはさらに5位後退し、第54位であった*1。また2005年5月にIMDが公表した「全世界各国競争力年度報告」によると、中国は2004年の第24位から第31位に後退した。ただし、2006年のIMD報告によると、中国は19位へ急上昇した*2

このように、2006年の中国国際競争力評価について、二つの機構は意見が分かれている。一般的に、WEFの評価は「ソフトな競争力」(マクロ経済管理、技術革新と公共機構すなわち政府の質という三大指標重視)に重点が置かれるのに対して、IMDは比較的「ハードな競争力」(経済発展状況、政府効率、企業効率およびインフラ建設という四大指標重視)に重点を置くと言われるが、この二つの評価機構は、データ結果とアンケート調査結果の評価の反映にも違いがある。特に「技術競争力」の向上をめざす中国にとっては、「ソフトな競争力」を重要視する意義が大きいと考える。これまで、市場競争の効率性、法的環境、金融効率、企業ガバナンス、健康と環境、教育などの指標が競争力の弱点として目立った。

一方、中国製品の輸出競争力は、以下の二つの特徴を持っている。

  • 輸出依存型の経済成長の実態は、中国に進出している外資系企業による輸出への貢献が大きく、輸出額の約6割を占めている。統計によると、2005年に数量制限が撤廃された製品の輸出増加量のうち、外資系企業が7割を占めた。外資系企業は、中国に生産機能を置くだけで、その他の研究開発や設計、基幹部品生産、マーケティング、物流などの業務機能は外国で行うのが一般的である。
  • 中国企業の総合競争力の欠如は、輸出競争力だけでなく、付加価値でも把握可能である。主な輸出製品は低付加価値の「來料加工」(原材料を輸入し、製品の大多数を輸出する加工業形態)が中心であり、付加価値は製品総価値の15−20%しかない。例えば、中国の輸出紡績品は外国のブランドメーカのための來料加工品がほとんどであり、中国企業の付加価値は商品価値10%相当の加工費である。同時に、中国の機械類加工品の多くも初級加工製品で、エネルギーと資源の消費が非常に多い。このような発展パターンは中国経済の持続的成長に警鐘を鳴らしている。

中国製品の競争力の二つの特徴である、外資系企業への依存と低付加価値の來料加工への依存は、中国製品が低コストを競争優位の源泉としていることに由来する。中国企業が製品の低コスト化を実現するに至った経緯は、実は中国の「挙国体制」確立と深い関係にあると思われる。

「挙国体制」確立の背景

挙国体制は中国で悠久の歴史を持つ。挙国体制というと、人々の頭にまず浮かび上がるのは中国の体育体制であろう。「挙国体育体制」の起源は中華人民共和国の建国後である。国家体育総局の幹部である李志堅は以下のように述べた。「挙国体制は国家利益を最高目標にし、精神意志と物質資源を含む全国的資源をできる限り動員・調達し、世界先端分野あるいは国家レベルの重大プロジェクト完成のために築かれる体制と運営メカニズムである」。中国がこれまでに1,054の世界記録、1,498の世界チャンピオンを取得できたのはこの体制の成果である。

挙国体育体制は、1984年ロサンゼルスオリンピック後、国家体育委員会がオリンピック戦略を作る際に、一部の幹部たちが、「わが国の優勢性項目の迅速な台頭は挙国体制のおかげだ」と指摘したことに由来している。この挙国体育体制の中身は、具体的には「ワンストップ式の訓練方式」、「全国運動競技会体制」、そして「国家チームの長期訓練体制」からなる。このような競技体育組織と管理法は「二弾一星」(原子爆弾、水素爆弾と人工衛星)開発モデルに似ていることから、「挙国体制」と名づけられた。その後挙国体制は中国の体育体制の全体を指すようになった。

一般的に、発展途上国は民族独立を果たしてから、限られた資源条件の下で国づくりを進めるため、あらゆる資源を集中的に動員する必要がある。「世界記録」と「世界チャンピオン」は国民の民族プライドを高揚する上で効果が発揮できるから、国力を集中して努力すべき目標としても選択されるわけである。実際には、新中国成立後、挙国体制は体育分野だけではなく、経済開発モデルを含む社会各分野に広がった。

1980年代日米貿易摩擦が激しかった時代には、日本は国際社会から「ウサギの小屋に住む働きばち」と風刺された。つまり国民の「勤労・節約」の美徳を動員し投資を増加させ、製品コストをできる限り下げる日本の「挙国体制」は、国際貿易摩擦の根源であるとされた。ここでは、国民の生活状態と生活態度、および政府の産業政策志向(例えば「行政指導」に代表される保護型産業政策)は非難の対象となった。日本から発したこの「東アジアモデル」の特徴を現在の中国が共有して、しかもより大きいスケールで展開していると考えられる。


(その2)へつづく

脚注

*1
全部で125の国と地域が対象。また2006年度は新しい評価システムを導入したため、これにあわせて、前年度(2005年)の順位の訂正が行われた。ちなみに中国は48位に訂正された。
*2
全部で60の国と地域が対象。アジアの日本、台湾、マレーシア、インド、タイ、韓国はそれぞれ第17、18、23、29、32と38位である。

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