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「中国の競争力」と「挙国体制」:現状と問題点(その2)
復旦大学国際関係・公共事務学院
副教授(博士) 陳雲

中国における「挙国経済開発体制」の特徴と問題点

中国の「挙国経済開発体制」は、1978年以前に構築された「重工業中心の開発戦略」以降、何度も戦略転換が図られたが、抜本的な脱却に至っていないのが現状である。

1978年以降の「挙国経済開発体制」の基本的な特徴は以下のように概観できる:

  • 国家と民族的利益の至高無上性。これは地域的、個人的利益の相対的後退を意味する。非均衡的開発戦略の採用もこれによって「大義名分」を持つ。
  • 強い政府主導の開発体制。巨大な政府投資で経済を引っ張る積極的財政政策が象徴的存在である。
  • 労働者や消費者に対する生産者の優位性。これは計画経済体制における「生産者主権」のある種の延長だと考えられる。

外需依存型の高度経済成長の背景には、固有のリスクが存在する。中国の輸出製品の価格競争力が低生産コストに依存しており、挙国体制下で生産者が労働者や消費者より有利な立場に立っていることである。そのため、労働者の低賃金と貧弱な社会保障体制が容認され、環境汚染が深刻化している。短期的には、生産者は大量の輸出によって外貨を獲得し、経済成長を推進させ、国家のために貢献した(挙国体制はこの点を特に重視する)が、長期的には、このような「中国式経営」における悪質的伝導メカニズムは中国経済および社会の持続可能な発展を阻害すると考える。以下、三つの阻害要因を整理する。


第一は、内需不足と貿易摩擦問題の同時発生である。労働者の低賃金と貧弱な社会保障体制は中国の広大な一般民衆(特に農村部)の消費心理を保守化させ、実質購買力低下、内需不足という結果を引き起こした。内需が不足する故に、経済成長のためにはさらに国際市場に依存しなければならない。そのため国際貿易摩擦が激化し、訴訟が増加した。中国の廉価消費財が輸出対象国の国内企業から市場を奪い、消費価格のデフレを引き起こす問題と、輸出対象国の労働者の雇用機会を減少させる問題である。輸出先の相手国の民衆から反発を受けるケースが既に多発している。例えば、2004年9月16日、スペイン南東部の「靴の都」Elcheで中国の温州市製靴の商店や倉庫を目標にした放火事件が起きた。この事件は中国製品が海外で引き起こした種々の貿易摩擦の縮図と見られている(ただし、一年後の2005年12月17日にElche市靴製造協会は温州市を訪れ、双方がこれから良好な競合関係を築くように、「温州宣言」を共同発表した)。

一方、低生産コストに依存する「中国式経営」を行っている企業の持続可能な成長自身も既に現実の壁にぶつかっている。例えば、労働者権益の犠牲と環境悪化を代償にした成長およびその製品は国際社会の監視の対象となっている。1995年以来、「SA8000社会責任認証」を受けた世界の大手商社は中国で取引をする際、「生産規則項目」に照らして、中国側の製品供給企業に対して定期的に「社会責任」について検査し、改善を促す取り組みを始めている。


第二は、環境コスト排除の負の外部経済性問題である。生産者の環境コストに対する排除は、労働者権益犠牲に並んで、生産コストの低減に役立ち、中国製品の国際的価格競争力の重要な源となっている。しかし負の外部経済性の出現を無視してはならない。

  • 生活面では、国内で重大な環境汚染問題が広がり、国民の身体健康を損なう事件が多発している。
  • 企業向けの環境保護法令は未整備であり、企業が環境技術を導入・開発し、生産と管理プロセスを改善するインセンティブとしては不十分である。そのため、資源・エネルギーの大量消費が中国経済発展のボトルネックになるだけでなく、国際的石油・資源市場の価格上昇にも影響を与えている。言い換えれば、企業の環境活動へのインセンティブの問題を解決できなければ、中国製品を「価格競争力」から「技術競争力」へ切り替えさせることは不可能である。

このような状況が続けば、中国政府や国民が理解できるか否かを別にして、以上の二点は次第に「中国脅威論」の格好の材料となっていく。


第三は、「生産者主権」の経済的影響である。挙国体制の結果、中国社会でマイホーム、マイカーが急速に普及している。マイホームとマイカーの購入ブームは、直接的に中国の重化学工業率を引き上げた。工業付加価値に占める重工業の割合は2000年の62.5%から2004年の67.6%へ、工業総生産に占める割合は2000年の60.2%から2004年の66.6%へそれぞれ上昇した。ただし、留意すべき点が二つある。

  • このような重工業化の中身は楽観を許すものではない。機械類の初級加工を主体にする中国の経済発展モデルは、エネルギーと資源消耗型の発展モデルでもある。中国の戦略的資源の対外依存度が次第に高まってきた。国家統計局によると、2003年、中国の鋼材、酸化アルミ、鉄鉱石および精錬鉱石の輸入はそれぞれ対前年比で51.8%、22.6%、32.9%も増加した。専門家の推測によると、2020年には中国の石油対外依存度は60%に達する。また、2004年調整後の中国GDPは世界の4.4%を占めたが、原油、石炭、鉄鉱石、鋼材、酸化アルミ、セメントはそれぞれ世界消費総量の7.4%、31%、30%、27%、25%、40%を占めた。
  • 1980年代以来、中国のマクロ経済上、投資・生産能力の過剰問題が数回にわたって顕在化している。WTO加盟後は、貿易上の要因も複合的に影響し始めている。原材料・エネルギー価格の急上昇は、コストプッシュ型のインフレを引き起こしているし、バブル化した住宅やマイカー購入ブーム、不健全な金融システムは国内の資産バブルを引き起こす可能性も高い。このような問題を解決できなければ、最終的には中国経済に大きなダメージを与えるに違いない。一般の商品価格インフレと違って、資産インフレの危険性は特に厳重な注意を払う必要がある。1980年代末期から1990年代初期にかけた日本のバブル経済期に形成された資産インフレ(金融機関が深く関与した土地価格や株市場の高騰)は日本経済に深い傷跡を残した。1990年代以降の十年(「失われた十年」)をかけて、日本経済はようやくどん底から抜け出した。

中国の指導部は既にこの問題に気付いており、2005年の中央経済工作会議では、住民の消費購買力の増大を2006年の重点任務と規定した。そのため、所得格差の是正課題以外に、「不動産業」が経済発展を引き上げる効果を一方的に重視する姿勢から、急速な不動産価格の高騰が消費者に及ぼす「消費波及効果」も重視する姿勢の転換が求められる。「開発主義」を主導していた政府は「開発主義」の問題を認識し始めているが、制度的準備がまだ万全ではない。

総じて、現在のような「低賃金・低社会保障」、「環境コスト負担の排除」を特徴にする中国経済の発展モデルは、中国の産業高度化目標(すなわち「経済強国」)の達成を不可能にする危険性がある。

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