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第7回:流れの外に立って全体を見る

三田名誉相談役が逝去されました。三田さんの言葉のなかで、心に留めてきた三つを記させていただきます。


私にとって、三田さんと直接お目にかかる機会が訪れたのは、会長を退任されて相談役になられてからでした。当時企画室が担当していた、受注ガイドラインの説明にあがった時です。ガイドラインは、予算作成に当たって、市場の動きから判断してその妥当性を客観的に判断するために、三田さんが発想された経営の手法であると教えられてきました。その考え方は、この「流れの外に立って全体を見る」との表題で、三田さんご自身が「続有訓無訓;日本経済新聞社刊」(初稿「日経ビジネス」1991年10月21日号)に記されているので、抜粋させていただきます。


「流れの外に立って、全体像を客観的に見ることは、経営者にとって重要だ。経営の第一線に立ってしゃにむにやっていると、事業の取り組み方や進め方におかしなところがあっても気づかないものだ。―(中略)―現場で実際に仕事に取り組んでいる人には、それまで常識だったやり方を変えることは難しい。異なる視点から多面的にみる習慣を身につけなければ、大きな進歩は期待できない」。市場と事業の動きを冷静に捉え、次なる動きを読みきることは、経営の基本であると、三田さんは言われているように思います。とりわけ、客観性はスタッフに求められる基本的な徳目として、私は仕事を振り返る視座としてきました。


また、同文ではこのようにも言われています、「私はどんな作業でも、全体の流れを自分自身で整理することを習慣とした。仕事というものは、たとえで言うなら運動会のリレーである。いくら速く走っても、次走者にバトンを渡し損なうと台なしになる。次のランナーが走りやすいように、いかにうまくつなぐかが重要なのだ」。仕事はチームとして取り組むので、仲間とのつなぎを大切にすればうまく行きます。これからも、肝に銘じておきたいと思います。


二つ目の言葉は、ガイドラインの説明に伺った御茶ノ水の本社ビル(当時)18階の三田さんのオフイスに掛けられた、孫平化氏から贈られた額にあった「日新月異 立竿見影」という言葉です。孫平化氏は、日中国交正常化に貢献された方で、中国での事業に努力された三田さんとも深い交流をされていました。「日新月異 立竿見影」という言葉は、二つの熟語から構成されています。それぞれの熟語が縦書きされており、熟語の最初の文字を取ると、「日立」になるのだよと、三田さんから教えていただきました。中国の文化人は、自分の古典知識を披露するために、相手の名前の最初の文字を取って、額や詩を作る習慣があると教えていただいたのも、このオフイスでした。三田さんにこの詩の意味するところを伺うのははばかられたので、今回あらためて、日立中国の蔡君に調べてもらいました。


「日新月異」とは、儒教の有名な古典「礼記・大学」にあり、「毎日更新して、毎月異なる変化を図る」を表現しています。「立竿見影」は、同じく古典「漢書」にあり、「努力してすぐ効果がみえる」を表現しているとのことでした。したがって、「日新月異 立竿見影」とは、「毎日更新して、毎月異なる変化を図り、よく努力すればきっとよい効果がみえる」という、三田さんへの激励と応援の言葉ではないかと思われます。絶えざる革新こそが大いなる成果の源である、とは国境と時空を越えた、普遍の教えであります。


三つ目の記憶に残る言葉は、三田さんがコンピュータ事業部に来られた際、われわれ入社間もない社員に述べられた言葉として記憶しています。「幸福の女神に後ろ髪はない、前髪があるのみだ。チャンスは、平等に来るから、そのときにつかめ、つかめるように日頃の努力をせよ。しゅん巡しては、チャンスは逃げてしまう」。チャンスも、失敗も多いのが人生の常ではありますが、しゅん巡しない心がけがあれば、少なくとも面白くなるのではないかと、私は実感しています。レオナルド・ダ・ヴィンチもその手記でこう言っています、「幸せが来たら、ためらわず前髪をつかめ、後ろははげているからね」。天才の言葉には共通するものがあるようです。


これまで、自分を洗い直すタイミングには、これらの言葉を思い起こすことが多かったと思います。これからも。


三田さんのご冥福をお祈り申し上げます。

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よろしくお願い申し上げます。

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大変、興味あるお話しをありがとうございました。

私も三田名誉相談役からうかがった話しで心に残っているものをご紹介させていただきます。

鼓腹撃壌(こふくげきじょう)
・出典:十八史略
・はらづつみを打ち、拍子をとって地面をたたく様子。
・解説:中国の皇帝が本当に国民は幸せに暮らしているか、よくわからないと悩んでおられた。そこである日、ボロをまとって街の中に出て行かれた。そうしたら農民が畑仕事を終えて、家の前に出て、鼓腹撃壌の恰好で歌や踊りに興じている。皇帝がいなくても変わらないのではと思えるほどだった。国民が自分たちでちゃんと楽しく生活するのが何よりと、皇帝は満足された。
→ 部下に存在の大きさを感じさせないで、自然に仕事が進んで行けば良い。

先人の言葉を心して聞く姿勢も大事だと痛感しております。

2007-10-4

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