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第11回:もうすぐ楽しいクリスマス

一年のうち一晩、日数にして二日間だけしか働かないのに、世界中のファミリーの支持を得ている職業は何だろうか。わが国技の相撲にしても、かつては二十日、現在は百日近く格闘せねばならない。最も労働時間の短いドイツにしても1,500時間は働かなければ。しかし、子供には、この職業は誰かすぐに分かる。幼児のころのわが娘は答えた、「サンタだよ」と。


12月といえばクリスマスである。クリスマスといえばサンタである。サンタクロースは、12月24日から、25日にかけて、赤い服やトナカイに乗って、ホウホウホウと言いながら、クリスマスの夜空を駆け巡り、煙突を伝って、世界の子供たちの靴下の中にプレゼントを放り込むことが仕事である。しかし、二日間の仕事は、楽しそうであっても実は苦労が多い。そうでなければ、ファミリーの信頼は得られない。サンタクロースばかりが、楽をして子供に好かれてはならんのだ。この問題意識は万国共通であるらしい。本屋に山と積まれたクリスマス本には、この問題を解く本が多い。中でも、私のお薦めは、サンタの仕事ぶりが克明に描かれた絵本、レイモンド・ブリッグズの「さむがりやのサンタ(Father Christmas by Raymond Briggs, 1973)」 * である。


同書によれば、クリスマスの一日は、こうして始まる。暖かいベッドで気楽な夢を見ていたサンタは、まず目覚まし時計に起こされる。日めくりカレンダーの12月24日に目をやるサンタ、「やれやれ、またクリスマスか!」の一言で忙しい一日が始まる。パジャマを、暖かそうな下着とサンタファッションのズボンに着替える。二匹のトナカイに餌をやる。飼い猫と犬にも。鶏小屋から卵をとってベーコンエッグを作る。紅茶をいれて、「雪、雪、そして大雪」との大見出しが載る新聞を見ながら暖かい朝食を食べる。「早く、夏にならんかねえ」とぶつぶつ。


さて、出発の用意である。お弁当のサンドを作り魔法瓶に紅茶を入れてプレゼントをそりに積み込む。そしていよいよあの赤い服を羽織って、サンタファッションで出発。戸締まりをして、猫と犬に留守を託して出かけるサンタは、あたかも、休暇明けの単身赴任サラリーマンのように不機嫌そうだ。


  ラジオから流れる「雪、氷、霜、霙、雨、霰・・・」との天気予報通りの、極寒の空中をそりで走り、良い子の家の煙突を目指し仕事を済ましていく。子供たちがサンタへのお礼として用意しておいたジュースをみて「ふん、なんだ、ジュースかい」。ブランデーが置いてある家では、「けっこう、けっこう」と一杯やって暖炉でくつろぐ。お弁当を、雪が積もった屋根の上で、トナカイと食べる。欧州、北極、とひたすらそりを走らせ、仕事が続く。


仕事の最後に女王陛下のバッキンガムパレスにも忘れずに立ち寄るのは、作者のブリッグズが、イギリス人であるからだ。夜明け近くに、牛乳配達と出くわして、「まだ終わらないのかい?」と問われる場面は、牛乳配達を仕事としていたブリッグズの父親に対する尊敬の表れだ。こうして、ようやくプレゼントを配り終えたサンタは家に戻る。イギリス人お得意の紅茶を沸かし、留守番の猫と犬に餌をやり、ストーブに石炭を入れ、服を乾かす。沢山の根野菜を詰め物したチキンをオーブンに入れて、お風呂に入り、ご馳走を食べる。クリスマスプデイングとブランデーと葉巻をたしなんで、「ああ、いい気持ち」のサンタ。おばさんや親戚からサンタあてに届いたプレゼントを開けて、品定めをする。


最後に、お皿を洗い、湯たんぽを作り、ベッドに入る。日めくりカレンダーを25日にめくって、「これで、今年の仕事は、終わったわい」。猫には魚の形のプレゼント、犬には骨の形のプレゼントをあげる。そして、読者に向かって「ま、おまえさんも、楽しいクリスマスを迎えるこったね」と眠そうに言う。これがレイモンド・ブリッグズ氏によるサンタの一日である。


二日間だけとはいえ、相当な激務である。サンタを待っている世界の子供に、プレゼントを漏れなく届けなければならない。サンタは、この激務をどうすればこなせるのだろうか?この角度の問題意識にも、議論は尽きない。


1998年、米国のフェルミニ研究所は、ホームページで、「もし、子供たちが8時に寝て、朝6時に起きるとしたら、サンタは一晩34時間、持ち時間がある。20億人の子供たちがプレゼントを期待しているとすると、世界中で8億軒の家を回らなければならない。その場合、サンタはほぼ光のスピードで飛ばねばならない」としている。しかも、「サンタが連れている『赤鼻のトナカイ』の鼻は、その速度では、赤くは見えず、緑、青、紫と変化し、しまいには、紫外線域に入って見えなくなってしまう」というのだ。ところで、この機知に富んだ記事に対し、2000年5月、光の速度に関する反論がなされ、それが記事となって、反論が反論を呼ぶといった状態である。


2002年には、アメリカ物理学会はホームページで、「サンタは、どうやって一晩で世界中にプレゼントを配り終えるのか?」と問い掛けた。数学者、コンピュータ技術者よ、サンタの問題解決に立ち上がれというわけだ。そして、2007年の今年、スウェーデンの技術コンサルティング会社SWECO社は、「地球上に均等に25億軒の家が分布しているとして、サンタがプレゼントを配り終えるためには、出発地はキルギスタンでなければならない。キルギスでなければ、最も効率的なルートを通ったとしても、48時間以内に世界中の子供たちにプレゼントを配ることはできない」という計算結果を発表した。そこでキルギスタン観光局は、記者会見を開き、「ずっと前からサンタはキルギスに住んでいることを知っていたけれど、とうとうスウェーデンの科学者により証明された。」とし、大々的に「サンタ探しコンテスト」を行っているそうだ。


ちなみにSWECO社のホームページは、「我々は、サンタの最適クリスマスルートを見付けた。それと同様のサービス、つまり、最短距離、最小コスト、そして、(ここがいかにも今風であるが)最も、環境にやさしいルートを探すサービスをご提供できます」と述べている。クリスマスソングとLED電飾に飾られた美しい町並みの空を飛ぶサンタに、想像力がかき立てられるのは、子供だけではない。ビジネスマン、科学者の想像力をInspireする何かがサンタクロースにはあるのだ。


・・・本当のことを言うと、サンタの悩みは、残り363−4日をいかに退屈せずに過ごすかにあるのだが、それについては、サンタからのプレゼントが、今年もまた、私に届けられたら書くとしよう。

  • * 絵本「さむがりやのサンタ」レイモンド・ブリッグズ作(1974年 福音館書店)

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経済で数学を扱うと聞くと、ソビエト経済崩壊を引き起こしたタイガーファンドのロケット工学者が考え出したという未来予測数学(株価予測)を連想する。この数学よりも株の神様バアフェットの投資方法のほうが利潤がはるかに莫大だつた。又、国連に莫大な寄付も可能だった。方法は会社経営者と懇意にするだったと思うが。この質問に対し、IT業界のエンジニア的発想(この敷地内の女性エンジニアの発想)。各家庭に日立製装置Xmasを設置する。クリスマスまでに両親が、何をプレゼントするか入力する。サンタは、入力されたら、部下を動員し、サンタの家のスーパー・サーバーに、指定されたプレゼントを入力する。クリスマスの日、その子供の家の装置にプレゼントがサンタから届く。これならば、サンタ及び部下は重労働ではない。で、両親のいない子供にいかにしたら希望するプレゼントが届けられるか、是非、考えて欲しいとのことです。

2007-12-21

非常に関心のある問題で、素晴らしい問題提起です。しかし、先日のTVで次のように言っていました。「eveとは、ローマ時代のeveningで夕方を意味します。ローマ時代の1日は、夕刻に始まり次の日の夕刻に終わる」と。つまり、昔のサンタは2日働かず、最近のサンタのみ2日働かされてる。この前提に戻り、もう一度問題の作り方の見直しをお願いします。過去は---、現代は---、となるのでしょうか。それともシーザーが悪いのでしょうか。

2007-12-21

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