日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
12月7日発表された2007年7〜9月期 GDP2次速報の下方修正を受けて、中期・短期経済予測(2007年11月12日付)予測値を見直した。2007・2008年度実質GDP成長率予測を、1.9%・1.9%から1.5%・1.5%に下方修正する。その中で、足元の状況変化を考慮すると共に、予測の標準シナリオに内在するリスクについて分析を加え、リスクシナリオを提示した。現時点ではまだ不確定要因が多く、標準シナリオの確率はおよそ6割と考えている。
今回の主な下方修正の要因は、2007年度は住宅投資と設備投資、2008年度は円レートと輸出である。住宅投資は、耐震偽装再発防止のための改正建築基準法(6/20施行)の影響が予想以上に大きく出ていること、設備投資は、政府のGDP2次速報の推計が下方修正されたことによる。2008年度の円レートは、110円から105円/ドルに見直した。中国経済の北京オリンピック後の調整による影響をより大きく想定し、下方修正している。
世界経済は、現在3つの不安定化要因((1)米国サブプライムローン危機、(2)原油価格、(3)中国経済の過熱)を抱えている。それらが互に絡み、2008年の世界経済は調整に向かう。
標準シナリオでは、3つの要因を各々次のように想定している。(1)米国サブプライムローン危機は長期化(米国住宅価格15%下落)、(2)原油価格高止まり(80ドル/バレル)、(3)中国経済は8%へ減速、である。米国経済の減速と政策金利引下げによるドル安(105円/ドル)と対米輸出の減少が、日本経済に打撃を与える。さらに原油価格高止まりが企業収益を圧迫。それでも2008年度上期までは、デフレ脱却による個人消費増加、住宅投資の2007年度混乱からの反動増、さらに中国など途上国向け輸出の堅調持続で、日本経済の拡大は続く。しかし、下期には、北京オリンピック後の中国経済の減速から対中輸出も減速し、2002年1月を谷とする景気拡張局面も終焉する可能性が高い。2008年度日本経済の成長率は1.5%(上期1.9%、下期1.0%)と予測。
リスクシナリオでは、(1)サブプライムローン危機の長期化・深刻化(米国住宅価格30%下落)、(2)原油価格の一層の高騰(100ドル/バレル)、(3)中国経済6%への失速、を想定した。この場合、米国住宅価格は過度に下落してサブプライムローン危機を深刻化させる。資金が金融市場から商品市場に逃避し、いったん原油価格は100ドルへ上昇。ドル急落で円高(90円/ドル)も大幅になる。一方、サブプライムローンなどの不良債権処分損は約50兆円に膨らむ(標準シナリオでは16兆円)とみられる。これは、90年代の日本の不良債権問題における公式処分損96兆円と比べて、絶対額では小さいものの、年平均のインパクトでは上回る。これは国際的信用収縮を引き起こし、金余り状況はいったん終局に向かう。日米がゼロ成長、中国も6%成長に失速し世界同時不況になる。これを受けて、原油価格は60ドルへ急落するなど、乱高下することが予想される。