アンビエント。それは、環境に溶け込むように存在すること。アンビエント情報社会とは、文字通り人とITが共存し自然な形でかかわりあっていく、そんな社会である。
社会システムを変えるイノベーションとして、情報社会の革命とも呼べるアンビエント情報社会が実現できないか。他に先駆けてこのプロジェクトを推進する、ある研究員に聞いた。
― アンビエントを着想した発端は?
「実は、次世代ITの調査・研究のため大阪大学大学院情報科学研究科に常駐していたのですが、大学の研究者とディスカッションする中でユビキタスの先を見据えたビジョンを創ろうということになったのです。そこで私が着目したのが建築や音楽の世界で『快適環境』を意味する言葉として使われていた『アンビエント』でした。しかし、聞き慣れない言葉であることやITとの関係性が明確化されているわけではないので、当初は学内や日立グループ内でも反応は今ひとつでしたね。」
― イノベーションはどう仕掛けていく?
「単純なITの延長線上ではイノベーションは起こせません。例えば、個人の居住空間でアンビエントな情報環境を実現するには、ITと建築学、また人間の行動を把握する社会心理学との融合も必要でしょう。さらに、家と家をつなぎ、地域社会をつなぎ、より大きな範囲でアンビエント情報社会を実現しようとすれば、あらゆる技術とのコラボレーションが必要になってきます。そのために異分野融合型の研究を推進するためのインフラも重要になります。現在、国家プロジェクトであるグローバルCOEプログラムとして、アンビエント情報社会を実現する基盤技術の研究拠点設立を提案する大阪大学と連携し、その実現に向けて活動しています。」
― プロジェクトの進捗状況は?
「国内の大学、研究機関、MITや全米科学財団、欧州委員会など国内外のさまざまな分野の研究者とも意見を戦わせながらコンセプトの精度を高めています。重点を置いているのは、技術を使う立場である人間側から発想すること。2010年に基盤技術が確立し、2015年には本格的なアンビエント情報社会が実現されるものと考えています。」



