(政策経済グループ)
日本の電子政府構築は、構想の段階から実現の段階をむかえようとしている。2000年11月のIT戦略会議の最終報告を受けて2001年1月に発表された政府のe-Japan戦略のなかでも、「超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策」「電子商取引ルールと新たな環境整備」「人材育成の強化」と並んで「電子政府の実現」が4大重点施策の一つとして取り上げられている。電子政府構築への本格的取り組みが開始されるきっかけとなった、小渕前首相のもとでまとめられたミレニアム・プロジェクトの中では、2003年までに世界最高水準の電子政府の基盤を構築するという目標が設定されている。その実現に向けて、電子政府の基盤となる霞が関WAN、住民基本台帳ネットワーク、総合行政ネットワークなどの整備も進んでいる。
一方、米国をはじめとする電子政府先進国と呼ばれる世界各国に目を転じれば、こうした基盤を活かして行政サービスを利用する市民や企業の利便性をいかに高めるかに関心が移っている。インターネットをはじめとするIT利用の広がりとともに、市民や企業の行政サービス向上への期待も急速に高まっていく。そうした期待にこたえるために、市民や企業を「顧客」ととらえ、電子政府を通じて「顧客」にとって利便性の高いサービスを提供する取り組みが広がっている。
日立総合計画研究所では、2000年5月、電子政府とはそもそも何か、実現にあたっての基本理念や目標設定、推進体制、行政効率化やサービスのあり方などを中心に、政策提言「The Competitive Government−世界最先端電子政府の構築による国際競争力の再生−」を民間の立場でまとめた。今回の新たな政策提言「利用者の視点に立った電子政府を実現するための33提言」は、前回の成果も踏まえつつ、特に利用者の利便性を高める視点に立って電子政府によって提供されるサービスに焦点をあてたものである。
本提言は、以下のような考え方に立ってまとめている。
第1に、利用者にどのようなメリットがあるのかを、可能な限り具体的に示すことを試みた。第2に、電子政府構築において世界最先端にある国々に先進事例を求め、国際競争力を有する電子政府の姿を明らかにすることを試みた。第3に、利用者から見て、サービス提供のプロセスも含め評価可能なオープンで透明性の高い電子政府のあり方を検討した。第4に、利用者にとっては、行政のどの部門がサービスを提供しているかは問題ではないとの考え方に立って、利用者に行政の「境界」を意識させないサービス提供のあり方を検討した。
今回、33の提言を、国民からみて「ゆりかごから墓場まで行政手続きを電子化する」、企業からみて「起業から事業発展までを支援する」、政府からみて「競争力ある政府を実現する」という3分野に整理した。本提言でとり上げた33のサービスを実現することはいずれの場合も決して容易ではないのも事実である。また、電子政府の構築にあたっては政府・行政部門だけでなく、民間の果たすべき役割が大きいことも忘れてはならない。本提言が今後、官民の協力によって真に利用者の利便性を向上させる電子政府を構築する一助となれば幸いである。



