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株式会社日立総合計画研究所

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美麗中国

研究第四部 中国分室
氏名:陳 嘉琦

I. 「美麗中国」とは

2012年11月に開催された第18回中国共産党全国人民代表会議(以下、18大)において、習近平氏は「美麗中国(中国をきれいにしましょう)」というスローガンを掲げました。これまで中国は、経済発展を中心に取り組んできました。しかし、環境への配慮が少なく、資源浪費や大気汚染の問題などが深刻化してきました。今回の18大では、環境および資源保護を経済発展と同レベルの重要課題として扱い、2015年までに環境への配慮を前提とした経済および産業システムを構築することを明言しました。中国政府は初めて自然環境、資源問題に積極的に取り組む姿勢を見せました。

II. 環境問題解決に向けたスローガン「美麗中国」

「美麗中国」は生態系保護を主眼に、資源の循環的利用、さらにエコシステムを基礎とする社会を目指し、グリーンかつ美しい中国を建設しようという新たな考え方です。経済の繁栄、生態系に良好な環境、人民の幸福を実現することを目標とし2011年に発表された第12次五カ年計画には、環境保護分野として(1)水処理、(2)固体廃棄物処理、(3)大気汚染対策、(4)環境モニタリング、(5)土壌汚染対策、(6)省エネといった6つの重点取り組み分野がありますが、「美麗中国」でこれらをさらに後押しすることになります。

III. 「美麗中国」により拡大する環境関連投資額

美麗中国」を実現すべく、環境保護分野への投資計画も発表されました。これにより、廃水再利用関連と都市生活ゴミ処理施設への投資額は第11次五カ年計画比で約2倍に達することが予測され、さらに重点地域の大気汚染防止には3,500億元(約5.3兆円)が投入されます(表1)。これらが「美麗中国」による重点投資分野となる見込みです。
表1 2015年までの環境保護分野への投資額予測


資料:国家統計局、環境保護部、各種資料より日立総研作成

IV. 矢継ぎ早に環境関連政策を発表する中国政府

中国政府は「美麗中国」を打ち出した後、環境保護分野を中心に投資を加速させています。以下は、中央政府や地方政府が2012年11月以降に発表した具体策です(表2)。

表2 「美麗中国」以降に発表された環境関連政策
政策発表時間 発表部門 具体内容
2012年11月26日 環境保護部 繊維業界の汚染水排出基準を発表。新基準は2013年1月1日から実施
2012年11月26日 広州市政府 広州市で処理能力2,000トンのゴミ発電所を新設
2012年11月28日 上海市政府 「再生資源リサイクル管理法」を発表。生活ゴミのリサイクルネットワークを構築
2012年11月30日 山東省政府 鉄鋼企業の排出モニタリングを開始。排出基準を上回る企業に対し罰則を制定
2012年12月5日 中国環境保護部、
発展改革委員会、
財政部
「中国重点地域大気汚染防止第12次五カ年計画」を発表。具体的に取り組むべき国内13地域を特定し、3,500億元(約4.2兆円)の対策費と、具体的に対処すべき課題(排出基準甘い車の更新、二酸化硫黄汚染、粉塵、など)を明示
2012年12月11日 国務院 「第12次五カ年リサイクル経済発展計画」を発表。リサイクル工業、リサイクル農業とリサイクルサービス業の構築について、税制優遇、融資、産業育成、投資誘致政策を整備
2012年12月28日 北京市政府 2013年1月15日から市内水道水の水質状況を市民に公開
2013年1月1日 環境保護部 全国74都市の大気汚染状況のモニタリング開始。大気汚染指数(AQI)を公表
2013年1月4日 環境保護部、
農業部
「家畜家禽による汚染防止第12次五カ年計画」を発表。アンモニア排出量を2015年までに10%以上削減することを目標
2013年1月7日 国務院 「上水向け水資源管理制度評価法」を発表。全国の水道供給事業者は2013年までに水質情報の公開を義務付けられた
2013年1月11日 住宅・都市建設部 「都市汚水再生利用技術ガイドライン」を発表。都市再生水プロジェクトの設計、工事、エンジニアリングなどの分野で指針を発表

資料:各種資料より日立総研作成

V. まとめ

首都北京市の大気汚染問題をはじめとしたさまざまな環境問題を抱える中国は、今後5年から10年の間に最重要課題として環境問題に取り組み、汚染大国から美しい中国に変貌する意欲を見せています。民間企業や外資系企業も中国政府に対して積極的に環境ソリューションを提供することが重要です。「美麗中国」の下、中国が真の環境大国へと発展することが期待されます。

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