日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
世界経済は18年春からIT、自動車など製造業が循環的に下降局面に入っていたところに、米中貿易摩擦の長期化や、Brexitの合意なき離脱可能性上昇などの逆風が加わり、18年3.6%から19年3.1%へ減速、20年3.3%と回復も弱い。19年4-6月期成長率は、中国(前年同期比6.2%)、ユーロ圏(前期比年率0.8%)、米国(同2.0%)、日本(同1.3%)と、いずれも1-3月期の伸びを下回り主要国経済の減速が鮮明になってきた。
19年12月に米中間の制裁関税がほぼ全品目へ拡大した場合でも、購買力低下を通じた消費下押し効果は米国でGDP比0.3%、中国で同0.1%と限定的だが、関税の先行き不透明から企業が設備投資を先送り、米国景気後退懸念を招いている。
18年の2.9%成長から19年2.3%、20年1.8%と減速。製造業の活動が縮小、国債の長短金利も逆転するなど、市場は景気の先行きを不安視。これまでは良好な雇用所得環境を背景に個人消費が堅調で景気をけん引したが、対中制裁関税第4弾(19年9月から1,100億ドル分実施、12月から1,600億ドル分実施予定)には対中依存度が高い消費財を多く含み、消費下押し懸念。金融政策では、FRBは7月の利下げ後、9月と12月に追加利下げ、FF金利(上限)は年初の2.5%から年末1.75%へ低下。FRBの金融緩和を見越した長期金利の低下により景気後退は回避も、供給制約もあり20年には潜在成長率の1%台後半へ減速。
ユーロ圏は、18年1.9%から19年1.2%、20年1.3%と潜在成長率1%台半ばを下回る成長率へ減速。輸出依存度の高い中核国ドイツは英中向け輸出鈍化や世界的な自動車需要低迷から製造業生産が不振。19年は0.6%成長にとどまり景気後退寸前。ECBは19年9月金利引き下げ、量的緩和再開も追加的効果は小さい。拡張的財政政策への転換も遅れており、ユーロ圏全体でも景気後退寸前が続く。
英国は18年1.4%、19年1.3%、20年1.3%とかつて2%程度だった潜在成長率が1%台前半へ低下。離脱期限は20年1月末まで延期され、10月末以降に総選挙となる可能性が高いが、ジョンソン首相が議会を無視して10月末に合意なき離脱強行のおそれも。
金融リスク抑制のためのデレバレッジ(債務削減)とIT需要減、さらに米中摩擦を受け、18年6.6%、19年6.2%、20年6.2%と減速続く。これまでの減税や電気代引き下げなどで個人や企業の支出増を図る景気刺激策はあまり効果を発揮せず、インフラ投資の鈍化や自動車販売の減少に歯止めがかかっていない。政府は、今後、老朽団地の改造などの生活インフラ投資など政府支出増に踏み込む。金利引き下げにより、人民元は7元/ドルを超えて下落も、資本規制強化により人民元急落は防止。金融リスク低減と経済構造転換は継続方針で、経済全体では20年に減速は止まるも、製造業の減速は続くとみられる。
中国やアジア向けを中心とした輸出減により、鉱工業生産の伸びが停滞。製造業は、収益悪化から、19年度設備投資を抑制。所得の伸び悩みもあり消費マインド悪化。そうした中での19年10月消費税率引き上げで19年度下期は景気後退に。政府は19年度補正予算で2.0兆円規模の経済対策を打ち出すが、効果顕現は20年半ば以降。18年度0.7%から19年度0.4%、20年度▲0.1%と成長率低下。利下げ余地があるFRBと比べ日銀の金融緩和余地は小さく、米国景気後退時には金利差縮小により一層の円高リスク。
注:暦年ベースのため、日本の値は下表の年度ベースと異なる
ASEAN5はインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム
資料:IMF、予測は日立総研
注:消費者物価指数(コア)は増税分を除く
資料:内閣府ほか、予測は日立総研