日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
世界経済は、中東情勢の悪化など先行き不透明要素を抱えながらも、これまでのところ予想以上の粘り強さを示している。その背景にある米国経済の堅調さの持続性に加え、鈍化基調にあるとはいえなお粘着性を示すインフレの動向、それに対応した米国の金融政策やグローバルな金利動向が当面の焦点。インフレ再燃や米金利高止まりによるスタグフレーション・リスクや新興国の通貨急落、資産市場の急変リスクなどにはなお注意が必要。脆弱さを内包しつつ安定成長の持続性を探る局面が続く。世界成長率は24年3.1%、25年3.2%。
24年1-3月期の米GDP成長率は、前期比年率+1.3%と前期から減速した。4・5月の雇用指標はまちまちの動きだが、貯蓄率の低下や新規求人の減少を踏まえると、米景気は24年後半には更なる減速が予想される。インフレ率については、サービスなど一部で低下ペースが緩和していることから、FRBの利下げは、9月に実施されると予想する。インフレ再燃に伴う高金利の長期化がもたらす景気の下押しや、商業不動産や消費者ローンなどの延滞率上昇がリスクとして挙げられる。実質GDP成長率は、24年2.4%、25年1.5%。
24年1-3月期のユーロ圏GDP成長率は、前期比年率+1.3%と6四半期ぶりの高成長となり、景気は回復の兆し。インフレ率は低下が続き、ECBは24年6月に利下げを実施。24年後半は、利下げ効果も加わり、景気回復は加速する見込み。英国でも24年初のGDP成長率は高めの結果。インフレ率は低下が続き、BOEは8月に利下げと予想。7月の総選挙では政権交代となる見込みも影響は限定的。ユーロ圏の実質GDP成長率は、24年0.7%、25年1.3%。英国の実質GDP成長率は、24年0.6%、25年1.2%。
中国は、昨秋の1兆元の財政出動が、治水インフラ工事を中心に効果発現。生産増とGXに向けた政府支援策を背景に製造業投資も増加し、年後半にかけて成長が継続する。輸出はEVなどへの米欧追加関税が下押しも、循環的な回復が続く。一方で、雇用環境低迷の中、消費の回復は緩慢にとどまる。不動産は、政府が完工・在庫解消に向けた支援策を拡充も、規模は限定的で、正常化時期は25年に後ずれする。不十分な労働投入や低調な対内直接投資など、構造問題は引き続き残存。実質GDP成長率は、24年4.8%、25年4.4%。
日本経済は、定額減税の実施や実質賃金の拡大に伴う消費回復などにより、24年後半から緩やかに回復すると予想する。設備投資についても、高い経常利益を背景に大企業がけん引役となり、増加が予想される。輸出は、自動車の不正問題から年前半はやや失速を予想するが、欧米の利下げに伴う需要回復により、年末にかけて持ち直しを予想。日銀の年内利上げは今後の経済環境次第で前倒しの可能性もあるものの、10月に実施される見込み。実質GDP成長率は、24年度0.6%(24暦年0.1%)、25年度1.3%(同1.5%)。
インドは、安定的なインフラ投資の増加に加え、インフレ鈍化による消費増もあり、堅調な内需によって24年度も高成長が続く見込み。インフレ安定と国内経済の堅調を背景に金融政策は当面据え置き継続の公算。成長率は24年度7.0%、25年度6.6%を予想。ASEANは輸出やインバウンド持ち直しで総じて回復も、通貨安や食料価格上昇による輸入インフレに注意が必要。金融政策は国ごとにばらつき。ASEAN5の成長率は24年4.8%、25年5.0%。
注:暦年ベースのため、日本の値は下表の年度ベースと異なる。ただしインドは年度ベース
ASEAN5はインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム
資料:IMF、予測は日立総研
注:端数処理により、数値の合計が一致しない場合がある
資料:内閣府ほか、予測は日立総研