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【短期経済予測】21年世界経済はスロースタートも、米中が先導し年後半回復へ

    2021年3月3日

    1.世界:21年はスロースタート後、年後半景気回復、ワクチン普及には不確実性残存

    21年の世界経済は、20年終盤からの感染再拡大による活動抑制の影響で、年初から春先にかけ不安定なスロースタート。先進国を中心とする経済対策効果とワクチン接種普及で、21年後半から世界景気は回復軌道。中国と米国が世界経済全体の回復を先導。成長率は20年▲3.4%、21年5.3%、22年3.9%。ワクチン普及ペースや効果を巡る不確実性残存する中、先進国中心に財政拡張、金融緩和による支援は当面継続。

    2.米国:バイデン政権の追加経済対策が21年央以降の景気を大きく押し上げ

    バイデン政権による1.9兆ドルの追加経済対策は、1.5兆ドル程度に減額され実施。巨額の所得補填や失業給付が21年4-6月期以降の米経済を下支え。ワクチン接種が広がる21年後半には、サービス消費を中心に景気回復ペース加速。外食、旅行、娯楽サービスの反動増に加え、不動産、自動車などのセクターでは堅調な生産活動拡大。米国の実質GDP成長率は、21年5.5%、22年2.5%。

    3.欧州:再ロックダウンにより21年の出足は低調、ワクチン接種で年後半から回復加速

    感染再拡大に伴うサービス業の停滞により21年初はマイナス成長。ただし、ロックダウン措置では一定の経済活動が認められ、20年と比べ景気への悪影響は限定的。21年後半には、ワクチン接種の広がりと復興基金により回復が加速。予測期間を通じて、緩和的な金融政策が継続。ユーロ圏成長率は21年4.0%、22年3.4%。英国は、EUとのFTA締結で、Brexit後の混乱による経済への悪影響は限定的。ワクチン接種が相対的に早く進み、景気は21年半ば以降回復。英国の実質GDP成長率は21年4.9%、22年5.7%。

    4.中国:感染再拡大抑制で21年は8%近傍の成長、経済安定維持に注力

    21年は22年共産党大会に向けた重要な1年。感染再拡大抑制に細心の注意を払いつつ、新型インフラを含む国内投資推進で内需を支え、雇用所得改善と消費回復につなげる政策で、8%近傍の高成長に拡大。不動産市場の急落や企業の連鎖破綻などによる、金融システム不安定化リスクに対する警戒継続。22年は巡航速度とみられる5%台半ば程度の成長に軟着陸。米国との対立長期化を前提とする持久戦想定し、「双循環」戦略を掲げ、内需拡大、米国以外の海外との投資・貿易関係強化を推進。

    5.インド・ASEAN:インドは21年回復も構造問題残存、ASEANは回復力にばらつき

    インドは新規感染減少を受けたロックダウンの段階的緩和で20年秋以降、経済活動は順調に回復。21年度は、20年度落ち込みの反動と財政対策もあり10.0%の高成長。不良債権問題の抜本解消には時間。ASEAN5各国は、21年は全体として回復に向かうも、回復力にはばらつき残る。ベトナム経済は堅調維持、マレーシアも電気機器輸出増加が景気回復を後押し。他方、観光依存高いタイは反体制デモなど政情不安も抱え、21年も不安定。

    6.日本:緊急事態宣言で足元の経済は低迷も、春以降は経済対策と輸出増で景気回復

    20年10‐12月期は前期比年率12.7%と回復も、21年1-3月期は感染再拡大に伴う緊急事態宣言の再発出により消費が落ち込み、マイナス成長見込み。春以降は、1月末に成立した第3次補正予算(19.2兆円)に基づく公共工事増や消費支援策が経済回復を下支え。海外経済の戻りを受け、輸出増も景気回復に寄与。ワクチンは、21年度後半には接種を希望する国民の大半に行き渡ると想定。三密回避が難しく停滞続くサービス業(飲食、宿泊、娯楽、小売、公共交通など)の業況が大きく改善し、経済は回復加速へ。実質GDP成長率は21年度3.5%、22年度1.7%、完全雇用回復は23年度後半の見通し。

    世界経済の見通し(実質GDP成長率)

    世界経済の見通し
    注:暦年ベースのため、日本の値は下表の年度ベースと異なる。ただしインドは年度ベース
    ASEAN5はインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム
    資料:IMF、予測は日立総研

    日本経済の見通し

    日本経済の見通し
    注:消費者物価指数(コア)は増税分を含む
    資料:内閣府ほか、予測は日立総研

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