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【短期経済予測】広がるパンデミック・リセッションのリスク

    2020年3月5日

    1.世界:新型コロナウイルスの影響で、20年は世界不況の瀬戸際2.5%成長

     世界経済成長率は19年2.9%後、20年は2.5%と世界不況(2.5%未満)の瀬戸際。21年も3.4%と回復鈍い。20年1月時点では主要国の製造業に底入れの兆しが出ていたが、2月に入り新型コロナウイルスの影響で腰折れ。複数大陸を跨って感染が広がるパンデミック化。
     20年1-3月中国で工場閉鎖、外出規制により、生産、消費減少。2-4月には中国と同じく緊急対策を行う韓国、日本などで外出自粛や消費意欲減退により消費減少。全土での緊急対策までは至らない欧米もこれらの国・地域向けの輸出減、インバウンド需要減などの影響が拡大。新興国は、19年3.7%、20年3.5%と2年連続4%割れ。中国向け輸出減や、東南アジアでは自動車、機械、繊維などの部品・材料納品滞り、資源国では資源価格下落が打撃。

    2.米国:FRBは1%利下げで対応、20年は潜在成長率以下の1.6%に減速

     20年2月調査では底堅い労働市場を背景に消費マインド高水準だったが、2月最終週に新型コロナウイルスの影響を金融市場が懸念し、株価と長期金利が下落。FRBは20年3月3日に0.5%の緊急利下げ実施。年前半にさらに0.5%利下げ見通し(FF金利上限は緊急利下げ前の1.75%から0.75%に)。2月以降、サプライチェーン寸断によるスマホなどの納品停滞やウイルス拡散をおそれた消費意欲減退により、個人消費低迷。FRBによる利下げが住宅投資を刺激、景気後退は回避も、20年成長率は1.6%と潜在成長率以下に減速。

    3.欧州:域内感染は抑え込むも、高い対中依存のドイツに打撃、イタリアは景気後退

     ドイツでは、輸出減から低迷していた生産が、在庫調整の進展に伴い底を打ちつつあったが、新型コロナウイルスの影響による対中輸出減に加え、世界的な自動車需要減も打撃。成長率は19年0.6%から20年0.2%へ一層減速。市中感染への緊急対策を実施するイタリアは20年景気後退。イタリアから欧州他地域への感染拡大は防止と想定、ユーロ圏全体の成長率は、19年1.2%から20年0.8%と低下、21年も1.3%の緩慢な回復。

    4.中国:1-3月2.5%へ急減速、景気対策実施により20年4.8%成長

     当局は、湖北省などを封鎖、北京などで外出制限、各地で業務再開規制など緊急対策を実施。結果、感染ペースは2月中旬以降抑制も、20年1-3月成長率は2.5%まで落ち込み。生産は、収束期4-6月以降徐々に春節前水準に回復し、年後半にはエレクトロニクスなどで在庫不足挽回のため生産増。需要は、自動車販促策などによる消費喚起効果は限定的で、消費低迷が20年中続く見通し。
     当局は2月中旬以降ウイルス対策最優先から転換し、過剰な業務再開規制をしないよう地方政府を指導、中小企業向け金融支援、地方債発行前倒しによるインフラ投資拡大などの景気対策を実施。結果、20年は4.8%の低成長、21年5.6%と潜在成長率程度に回復。

    5.日本:19年度下期景気後退、20年度は▲0.2%とマイナス成長に

     19年10-12月期消費税率引き上げの影響で前期比年率▲6.3%成長と大きく落ち込んだところに、新型コロナウイルスが追い打ち。20年1-3月期は中国工場閉鎖・減産によるサプライチェーン寸断、インバウンド需要減、対中輸出減に加え、感染拡大防止緊急対策による業務活動低下、不要不急な集まり自粛によりサービス消費が大幅減。1-3月期は前期比年率▲7.1%と2四半期連続マイナス成長、景気後退。19年12月閣議決定した公共工事を中心とした経済対策(真水3兆円)の効果が4-6月期から顕在化、プラス成長に戻るが、新規感染への不安残り消費意欲は7、8月の東京オリ・パラでも盛り上りに欠け、緩慢な回復。成長率は19年度▲0.2%から20年度▲0.2%とマイナスが続き、21年度は1.6%へ回復。

    世界経済の見通し(実質GDP成長率)

    世界経済の見通し
    注:暦年ベースのため、日本の値は下表の年度ベースと異なる
    ASEAN5はインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム
    資料:IMF、予測は日立総研

    日本経済の見通し

    日本経済の見通し
    注:消費者物価指数(コア)は増税分を除く
    資料:内閣府ほか、予測は日立総研

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