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消費者物価指数(CPI)

    所属部署 政策経済グループ
    氏名:山本薫之

    消費者物価指数(CPI)とは

    消費者物価指数(Consumer Price Index: CPI)とは、同指数を発表している総務省の定義によると「全国の世帯が購入する家計に係る財及びサービスの価格等を総合した物価の変動を時系列に測定するもの」、すなわち、「家計の消費構造を一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によってどう変化するかを指数値で示したもの」です。具体的には、消費者が購入する約600品目の商品・サービスの販売価格を167の市町村について調査し、これに消費者の支出額に応じたウエイトを乗じて指数を求めます。構成品目のなかでも、生鮮食品は天候などの要因によって価格が大幅に変動するため、時系列的に物価動向の状況を見るためには、「生鮮食品を除く総合」指数を日本では一般的に使用します。
    消費者物価指数は現在、政府によるデフレ脱却の判断基準のひとつとなっていることもあり、注目を集めています。また、日銀が長らく行っていた量的緩和政策の解除のための判断材料にこの消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年比の動きを使うと説明したため、その解除時期を巡って毎月発表される指数の値が注目されたことは記憶に新しいところです。

    消費者物価指数の基準改訂

    このように政策の重要な判断基準とされている消費者物価指数ですが、いわゆる基準年の改訂がこの8月に実施されたことが、さらに注目を集める要因となりました。
    消費者物価指数は特定の基準時点でウエイトを固定して、その時点に比べて価格がどう動いたかを調べるラスパイレス型といわれる計算方法を採用しています。時間の経過とともに消費者の購入商品が変化したとしても、すぐにウエイトの変更は行われません。ただし長期間を経ると実態にあわなくなってくるので、総務省では基準年を5年に一度変更します。この変更が本年8月に行われ、基準年が2000年から2005年に変更されたわけです。
    その結果、新しい指数は旧基準より前年比の伸び率が0.4〜0.5%ほど低くなりました。その理由のひとつとして、販売競争で価格が下落している薄型テレビやDVDレコーダーを今回から調査対象に加えたことがあげられます。これを受けて市場では日銀による早期の追加利上げ観測が後退し、長期金利が低下することとなりました。指標の作成方法の変更による統計数字の変化を受けて、市場はデフレ脱却のスピードがより緩やかになったと判断を変更したことになります。
    ここでは、「数字」というもののある種の魔力を感じざるを得ません。すなわち、実体経済が変化したわけではないのに、統計の数値改訂によって市場が動き、それが実体経済に影響を与えることになるわけです。翻って考えると、今の世の中、あらゆる場面で「数値化」が行われています。企業業績はもちろん、様々な個人の業績に至るまで定量化されています。あらゆる場面において、同様の数字の魔力が良かれ悪しかれ影響力を発揮する可能性があります。「デジタル化(digitization)」という言葉がまさに「数値化」という意味であり、音楽や映像、果ては個人情報までもが「数値化」されているこの世界において、自戒の意味も含め、数字の扱いには十分気をつけたいものです。

    変わらぬ消費者物価指数の重要性

    日銀は、ゼロ金利解除後の金融政策変更の判断材料として、消費者物価指数という特定の指標の重要度は量的緩和政策解除のときに比べれば下がるものの、引き続き物価の安定基調は重視していくとしており、物価重視という姿勢には変わりはないと考えられます。今後の日本における金融政策の動向、ひいては日本の経済の行く末を見ていくうえで、引き続き消費者物価指数の動向が注目されます。

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