所属部署 研究第五部 中国分室
氏名:郭寧寧
2010年5月に中国国務院が発表した「民間投資の健全な発展奨励および誘導に関する若干意見」とその実施細則を合わせて「新36条」といいます。これは民間資本の市場参入を後押しする政策といえます。
中国は1949年以降、社会主義国家となり、土地、企業などの私有制を廃止し公有制を導入しました。しかし、1978年から始まった改革開放政策をきっかけに、公有制の他民営企業のような私有制も再び認められています。社会主義経済と市場主義経済が並存する中国では、長期にわたって国営企業による一部市場の独占も続いています。国営企業に独占された市場の開放と、競争原理を導入した市場の活性化を狙い、2005年には「民間投資の奨励および誘導に関する若干意見(非公有経済36条)」が発表されました。ところが、国営企業の抵抗と実施細則の未整備により政策は頓挫してしまいました。そこで、2010年5月と2012年6月には改めて「新36条」が発表されましたが、これは中国政府が民間投資を後押しする決意ともいえるでしょう。
「新36条」の主な狙いは、社会インフラ事業の建設と運営をはじめとして、民間資本が参入可能な事業範囲を広げ、民営企業の自主イノベーション能力の強化と国際競争力の向上を図ることにあります。そのためには、公平な競争環境を構築し、民間の投資許認可手続きを簡素化し、個別付加条件の設定をできる限り排除しなければなりません。各産業への資本参入形式としては買収、合弁、一部資本参加などが認められています。「新36条」の実施細則は6分野、22産業に分けて制定されています。
分野 | 対象産業 | 民間開放された具体的分野 |
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(1)インフラ産業とインフラ設備 | 交通 |
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鉄道 |
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国土資源 |
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電力設備エンジニアリング・建設 |
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エネルギー |
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水利設備エンジニアリング建設 |
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通信業 |
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(2)公共事業と住宅建設 | 市政公共事業 |
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(3)社会事業 |
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(4)金融サービス |
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(5)商業貿易物流 |
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(6)国防科学技術工業 |
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「新36条」の施行により、民営企業の投資をはじめとする民間資本には大きなビジネスチャンスが見込まれます。実施細則の内容は、経済社会の発展や国民生活に関係するさまざまな分野にわたります。「新36条」は民間資本の参入障壁を取り除くための大きなステップです。中国はようやく公共部門の民営化改革に動き出しました。また、民間投資の導入と活用は今後の中国発展において重要な要素となり、中国経済成長への貢献が期待されています。これは中国市場に進出する外資系企業にとってもビジネスチャンスとなります。「新36条」の実施により中国国内の民営企業にはさらなる資金調達、多分野にわたる技術協業などが必要となるため、外資系企業はその優位性を発揮し、技術交流、合弁事業、金融サービスの提供などにより中国市場へ参入することも可能です。
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