Vol.20-1(2025年6月)
巻頭言
取締役社長
溝口 健一郎
原始時代のたき火から現代の原子力まで、人類はエネルギーの確保と共に発展し、またエネルギーの確保のために苦しんできた。1905年にアインシュタインが特殊相対性理論の副産物として発見したE=MC2の方程式により、エネルギーは物質の質量の約90兆倍になることが判明した。1グラムの物質から約90兆ジュールのエネルギーを生み出すことができる。これは、100ワットの電球を約30,000年ともし続けられるエネル・・・
特集レポート
2035年に向けたAI・デジタル技術とエネルギーの協調と課題
研究第一部 政策・環境グループ 主任研究員 藍木 信実
研究第二部 グローバル事業戦略グループ 副主任研究員 石井 俊太郎
カーボンニュートラル(脱炭素)達成に向け、化石燃料から再生可能エネルギーなどへエネルギーの供給・消費構造を転換するエネルギートランジションは、2015年のパリ協定合意後の世界的潮流であった。だが今、世界の地政学的な変化とデジタル化によって、エネルギートランジションをめぐる状況は変貌し、混とんとしている。この背景には、まず2022年のロシア・ウクライナ戦争開始後、エネルギーの武器化の動きや天然ガスの・・・
寄稿
武蔵野大学法学部 准教授
杉野 綾子
トランプ政権第2期がスタートして5カ月が経過した。選挙期間中、トランプ氏は、国内の石油・ガス生産拡大と、脱炭素に偏った政策・規制の撤廃を通じて、エネルギー価格を半減することを掲げていた。選挙の結果、大統領職および上下院の多数派をすべて共和党が占める統一政府が誕生したが、議席数差はごくわずかである。議会での超党派の合意形成は期待しにくいことから、トランプ政権が政策実現を図る上で、大統領令および行政機・・・
一般社団法人海外電力調査会 調査第一部 上席研究員
栗村 卓弥
2025年2月、欧州委員会は新たなEU政策「クリーン産業ディール」を発表した。同政策は、気候変動対策と域内の産業振興を、包括的な成長戦略の下で同時に達成することをめざしており、脱炭素化の方針は維持しながらも、産業競争力の強化に焦点を当てた対策を打ち出している。本稿では、まずEUエネルギー政策の成り立ちに触れ、続いて、2019年以降のEU政策「欧州グリーンディール」について概観する。その上で、「クリ・・・
一般財団法人日本エネルギー経済研究所 研究戦略ユニット 研究理事
小林 良和
2025年2月18日、政府は今後のエネルギー政策の基本的な方向性を示す第7次エネルギー基本計画を閣議決定した。小稿では、前次の第6次エネルギー基本計画から今次の計画への変更点や今次の計画が想定する将来のエネルギー需給の絵姿を紹介し、その実現に向けた今後の課題についてまとめる。エネルギー基本計画とは、2002年に制定されたエネルギー政策基本法に基づき、原則として3年ごとに政府が定める、日本のエネルギ・・・
合同会社エネルギー経済社会研究所 代表取締役
松尾 豪
近年、生成AIを始め、デジタル技術の目覚ましい発展により、データセンター需要が急激に拡大している。従前、データセンターの電力消費は1棟あたり数メガワットであったが、近年増加しているハイパースケールデータセンターは30〜70MWと10倍の電力を消費する。さらに、今後増加が予測されるAIデータセンターは200MW〜1GWと、100〜300倍の電力需要の消費が見込まれている。データセンターの立地は通信・・・
Challenges and Opportunities at the Intersection of AI and Energy
Joseph Majkut, Program Director
Cy McGeady, Fellow
Avrey Callis, Intern
Energy Security and Climate Change Program, CSIS
The global race to secure AI leadership is radically reshaping the U.S. electricity sector and the contours of global energy policy. This race has commercial and geopolitical dimensions, with private firms pursuing an expanding market and governments securing a critical element of national security. Both・・・
ビジネスの最前線から
Bo Yang
Vice President of Energy Solution Lab.
R&D Division, Hitachi America, Ltd.
日立アメリカの研究開発部門に属する Energy Solution Lab(ESL) は、2017年に設立されました。私たちのチームは、次世代のデジタルエネルギー技術の開発に注力しており、カリフォルニア州を拠点に連邦および州政府、電力会社、研究機関と積極的に連携しています。こうした取り組みを通じて、エネルギー業界およびそのエコシステムの発展における革新的なリーダーとしての日立の地位をより強固なもの・・・
機関誌「日立総研」、経済予測などの定期刊行物をはじめ、研究活動に基づくレポート、インタビュー、コラムなどの最新情報をお届けします。
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