研究活動などを通じ構築したネットワークを基に、各分野のリーダーや専門家の方々と対談
日立総合計画研究所(以下、日立総研)の創立50周年を記念し、日立製作所 川村隆名誉会長を迎え、日立総研の果たすべき役割について伺います。日立総研は「経済、社会、経営、技術等の各分野を統合したソフト・サイエンスの確立」を目的に、当時日立製作所会長であった駒井健一郎による発案で1973年に創立されました。その設立趣意書には「日立グループの長期的かつ基本課題とともに地球社会の課題解決に応えよ」「日立グループの人的結束、横断的トータルシステムを考えられる人材を養成せよ」とあり、このような視点がこれまで以上に求められる中、日立がめざす「持続可能な社会」「グローバル成長の実現」において、どのような考え方や意識を持つべきなのか議論します。(聞き手は、日立総合計画研究所取締役会長の鈴木教洋が担当)
株式会社日立製作所 名誉会長(日立製作所元会長、東京電力元会長)
1939年、北海道生まれ。62年、東京大学工学部電気工学科を卒業し、日立製作所に入社。電力事業部火力技術本部長、日立工場長を経て、99年副社長に就任。その後、日立マクセルなどグループ会社の会長を歴任。日立製作所が7,873億円の巨額最終赤字を出した直後の2009年、執行役会長兼社長に就任、日立再生を陣頭指揮した。黒字化のめどが立った翌10年に社長を退任、14年に取締役会長を退任。
2004~05年 一般社団法人電気学会会長、2010~14年 一般社団法人日本経済団体連合会副会長、2014~19年株式会社みずほフィナンシャルグループ社外取締役、2015年~17年 カルビー株式会社社外取締役、2016年~17年 株式会社ニトリホールディングス社外取締役、2017~20年 東京電力ホールディングス株式会社取締役会長。2013~15年には、日立総研の取締役会長を務めた。
著書に『ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」』(KADOKAWA)、『100年企業の改革 私と日立 私の履歴書』(日本経済新聞出版)、『一俗六仙』(東洋経済新報社)など。
鈴木:川村さんは、2013~15年の間、日立総研の取締役会長を務められました。日立総研は日立グループのシンクタンクとして「求真実」の研究姿勢を掲げています。グローバルの社会情勢や事業環境が不透明さを増す今、改めて日立総研に求められる役割についてご意見をお聞かせください。特に、川村さんの会長在任当時と比較して変化したこと、それに伴い日立総研が今後どうあるべきかについてご教示いただければと思います。
川村:日立グループは今、これまでにないほどの急速な事業構造の変革を経験しています。もちろん事業構造改革は昔から実施していましたが、プロダクトからデジタルへの移行が急速に進められており、その構造改革の振れ幅が非常に大きいと感じます。私は現在、日立の先輩方が集う日立社友クラブの理事長を務めているのですが、日立の事業におけるプロダクトの影が薄くなる中、諸先輩方は本当にこれでやっていけるのかと心配しています。もっとも私は、その意見に100%賛成しているわけではありません。なぜなら、今は第1次産業革命に匹敵する大変革期にあると考えているからです。
文明史を振り返れば、第1次産業革命は、人間の肉体労働を機械に置き換えることで、さまざまな産業の発展を可能にしました。ジェームズ・ワットが発明した蒸気機関は、鉄道、船、車、飛行機の発達や、工場の設備の大規模化、さらには機械的、物理的な機構の電力での代替につながり、人間の手と足でできることを大いに拡大しました。車一つとってみても、50kWで動く自動車だと約70馬力、馬70頭分です。70頭もの馬の力が必要なものを、1人の人間が機械なしで動かすのは不可能です。第1次産業革命では、肉体労働を機械で代替・支援して人間を楽にすることが幸せにつながるとして、その方向へ皆が一斉に向かっていったと言えます。人類にとってこれは非常に大事なステップでした。
私は現役時代、その機械化の最終章を経験したわけですが、もはや肉体労働の代替・支援産業は飽和してきています。もちろん、機械も設備もインフラもいつかは老朽化するので、その取り換え需要に見合う産業は残っていくでしょう。しかし、人間はその次の展開を考えていかなければなりません。これからの新しい産業・文明は、従来のような肉体労働の代替・支援より、頭脳労働を支援するものでなければならないと考えています。
人間の頭脳は、われわれが思う以上に高度で複雑なもので、簡単に機械に置き換えることはできません。そもそもコンピュータは、自分で問題をつくることはできません。従って、「この先、世の中はどうなっていくのか」とコンピュータに問うても、きちんと答えられません。とはいえ着実に進歩はしていて、コンピュータを使うことで、AIを開発し、ロボットに応用し、デジタルツインを構築してシミュレーションし、3Dプリンタでデータから製品を試作し、顧客の声をいち早く製品にフィードバックできるようになりました。個人を対象としたAIの活用という点では、GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)が中心となってビジネスを大きく広げてきたと言えます。Amazonは、世界中の人々の購買データを集めて分析し、顧客の好みなどを予測して提案することでビジネスを大きく伸ばしてきました。そしていよいよ、法人を対象とした頭脳労働の支援による産業革命が本格化するでしょう。これからの日立グループの役割も、頭脳労働を支援し、それを社会に普及させることにあると思っています。
このような産業・文明の急速な変化に対して日立としていかに対応するか、プロダクトを含む事業ポートフォリオはどうあるべきか、といった点は日立総研としての大きなテーマだと思います。今後、社会全体でプロダクトの縮小とデジタルの拡大が一層進む中で、どれくらいプロダクトが残る世界になるのか、また、そのような世界で日立グループが勝ち残っていくためにはどうすべきか、そこをぜひ日立総研にはしっかりと考えてもらいたいと思っています。
鈴木:おっしゃるように、日立グループの事業に影響を与えるような経済、社会、経営、技術の変化をしっかり捉えて、リスクとオポチュニティの分析・洞察を行い、ビジネスの方向づけをすることが日立総研としては非常に大事な役割になります。われわれはこれを、「ビジネスインテリジェンス機能」と呼んでいますが、この機能をベースに日立グループの中長期的な事業戦略の立案・実行を支援していきたいと思います。
鈴木:それでは、将来がなかなか見通せないVUCA*の時代において、ビジネスインテリジェンス機能を発揮する上で、組織としてどのようなケイパビリティが必要だと思われますか。
川村:デジタル化が進む中、企業が容易に扱いきれない問題として格差の拡大があります。デジタル製品・サービスは、簡単にコピーができてしまいますから、初めて市場に投入されるものに比べて、後続品が安価になってしまいます。従って、最初に良いものをつくった創業者や経営の上層部はもうかりますが、後から続く企業、特に中堅企業以下はほとんど利益が上がらないといったことになります。社会全体がそうなると、「トランプ現象」のようなことが起きるわけです。トランプ前大統領は、まさにそうした社会構造の中で生じた格差に不満を抱く中間層から大きな支持を集めました。かつてGMやフォードなどの工場の現場を支えた中間層は年齢とともに収入が増え、生活も安定していきました。ところがデジタル化が進むにつれ、社会の上層部ばかりに富が集中するようになってしまった。こうした構造を正さない限り、持続可能な社会を実現することは難しいと思っています。
しかし、格差の是正という非常に大きな問題は、容易には扱いきれません。こうした問題の解決にこそ日立総研がさまざまな組織と連携し、時には学問的な提案もしながら、政策提言をしていってくれることを期待しています。
鈴木:格差の是正の解決策として、具体的にどのようなことが考えられるでしょうか。
川村:例えば、負の所得税の導入があります。年収3万ドルを基準値として、それを下回る世帯にはマイナスの所得税を支給するといった仕組みです。ここでは税率を40%と仮定しましょう。年収が2万ドルなら、基準値からのマイナス分1万ドルを負の所得と見なし、税率40%をかけて4,000ドルを支給するといった明快な税制です。無収入であれば、負の所得3万ドルの40%である1万2,000ドルを支給します。これ以上格差が拡大しないように、このような分かりやすい仕組みを検討していくべきだと思います。
一方で、こうした取り組みが単なる貧民救済事業であってはなりません。経済学者ジョン・メイナード・ケインズの言う「アニマルスピリット」、すなわち企業家の野心的な意欲をそぐようなことがあってはならないのです。額に汗して頑張った人が頑張った分だけ稼げる、相応の見返りがある仕組みは正しく残しながら、格差を縮めていくことが重要です。
これは非常に大掛かりで難しいことだと思います。そう考えると、格差の是正は単なる税制改革だけでは済まないのかもしれません。新しい社会の仕組みなのか、思想・哲学なのか、何らかの大きな改革が必要です。例えば、1960~70年代に日本は深刻な公害を経験したことで公害規制が敷かれ、それが原動力になり、後に省エネルギーやグリーンビジネスが発展しました。このような大きな意識の転換が必要でしょう。
いずれにせよ、企業は付加価値を生み出して利益を上げ、社会に還元していかなければなりません。その一部を格差の是正に役立てながら新しい文明を立ち上げ、社会実装していくといったことが、これからの企業活動の軸として重要になっていくと思います。その際にどうやって利益を社会に還元し、格差の是正を実現するのか、そのメカニズムを考え、さまざまな組織と連携しながら政策提言をするところに、日立総研の大きな出番があると思っています。
鈴木:デジタル化により生じる格差、その課題にしっかりと向き合い、解決策を示し、提言をしていく。最終的には社会実装にまでつなげることが非常に大事だということですね。そうしなければ、これからの企業活動は成り立っていかない、と。その本質的なところに日立総研が取り組むべきだと理解しました。
川村:生成AIの登場で、人間の頭脳労働の支援は今後ますます加速していくでしょう。そのときに、そこから取り残される人が必ず出てきますから、そうならないよう解決策を考えてくれることを期待しています。
鈴木:カーボンニュートラルの実現に向けて、2023年5月の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)では、二酸化炭素排出量の削減に「多様な道筋」があるという認識で一致しました。カーボンネガティブに向けた技術開発も進められています。一方で、途上国は、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の場で、先進国からの資金支援増額を要求するなど、今後も先進国と途上国のカーボンニュートラルに向けた意見の対立は続きそうです。このような状況を踏まえ、カーボンニュートラルへの道筋をどのようにお考えでしょうか。
川村:先進国の務めとして、日本は率先してカーボンニュートラルの実現に貢献していくべきだと思います。日本の外貨準備高は中国に続き第2位であり、外貨が潤沢ですから、先進国として先頭に立って資金支援をすべきです。また日本は、過去に排出した二酸化炭素の総量が先進国の中では比較的少ない方です。だからこそ、カーボンの処置に対して、率先してカードを切れるのではないでしょうか。この問題は、単なる社会貢献というよりも、すでに始まりつつあるカーボンを巡る国際政治上の争いでもあると言えます。
加えて、二酸化炭素を大気から直接回収するDAC(Direct Air Capture)や、地中に埋め戻す二酸化炭素回収・貯留(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)などの技術も重要です。これにより、すでに排出してしまったカーボン、すなわち地球への負債を処置できるわけですから、技術開発にも真摯(しんし)に取り組んでいかなければなりません。
鈴木:政府は、二酸化炭素排出量を2030年度に46%減(2013年度比)、2050年にはゼロエミッションを実現すると表明しています。日立グループとしても、おっしゃるように、今後、DACやCCS、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)の研究開発に取り組み、カーボンニュートラルの実現に貢献していかなければならないと考えています。また、そうしたテクノロジーをビジネスに展開し、新興国や途上国にも広げていきたいと考えています。
鈴木:次に、これからの時代におけるグローバル成長についてお聞きします。グローバル社会のさらなる発展に貢献するために、日立は何をすべきでしょうか。
川村:日立の株式時価総額は、日本企業の中では15〜18位くらい、世界で見ると300位くらいです(2023年6月現在)。そういう意味ではまだ伸びしろがあります。この時代に世界で影響力を持つ企業になるには、株式時価総額を現状の約8兆円からさらに2兆円伸ばして、10兆円企業になるべきでしょう。
ちなみに、私が日立製作所の執行役会長兼社長になる前は4兆円あった株式時価総額が、私が引き継いだばかりの時は0.8兆円まで落ちていました。つまり価値が80%も減少してしまっていたため、まずはなんとか元の価値まで戻そうと奮起しました。
しかし、今の日立は状況が違います。すでに8兆円の企業なので容易ではありませんが、10兆円企業にすることも不可能ではないでしょう。ただ、さらにそれを倍にしたとしても、世界ではトップ50にも入れません。米国を中心に、世界には巨大企業が多くあり、日立はその群像の一つでしかありません。それを認識した上で、世界に影響力を持つ存在としてさらに大きく成長していく必要があると思います。
もちろんグローバル化自体は進展しています。現在、日立グループの従業員は国内が約16万人であるのに対して、海外が約21万人と、いまや海外従業員の方が多い。グローバル戦略としては正しいだろうと思っています。一方、日本国内はどうか。日本全体の経済力は、誠に残念ながら右肩下がりになるだろうと私は予測しています。少子化が長年続いたため、急に人口を増やすことはできません。人口減に伴って必ず右肩下がりにはなる。そのときに、昨日よりも今日の方が暮らし向きが悪くなるという状況が長く続くことに、きっと多くの人は耐えられないでしょう。そうなると、恐らく誰かがこの状況を変えていこう、もっと頑張ろうと言い出すと思います。
過去を振り返れば、日本はこれまでに2回、奮起した歴史があります。明治維新と第2次世界大戦後です。明治維新のときは、欧米の列強国に支配されないように立ち向かい、第2次世界大戦後は敗戦国の焦土から再興しました。この先も、なんとかしなければならないという条件がそろえば、立ち向かう人たちが出てきて、必ず復活できるだろうと信じています。いや、そうならなければならないのです。
そのためには、教育が大事です。特に明治維新から近・現代において、困難を乗り越えてきた日本の歴史をしっかり教育することで、どのような状況になっても前向きに励める人材を育てることが極めて重要だと思っています。子どもだけでなく、子どもに教える大人、親もまた学ばなければなりません。社会人教育、学び直しも非常に大事だと思います。
人というのは、怠けているとすぐにダメになります。会社も廃れます。実際に、私は日立でそれを経験しました。先述したように1990〜2008年までの18年間で、日立は80%もの価値を失いました。20年近く怠けてしまった。私も怠惰な社員の一人だったわけですが、このようなことは二度とあってはなりません。現状の日本の国全体も、当時の日立と同じ状況になろうとしています。ここは、教育に注力し、日本人の頑張る力を取り戻すことが肝要です。
鈴木:株式時価総額で10兆円、さらには20兆円をめざし、真のグローバルリーダーになること、そのために教育・人材育成が重要だということですね。
鈴木:先ほどお話があったように、日立は海外従業員数の割合が6割弱と、すでに国内の従業員数を追い抜き、ダイバーシティや公平性がこれまで以上に求められています。そのような中、多様なバックグラウンドを持った人と協力し、組織を成長に導くグローバルリーダーを育成する上で、企業や社会は何をしていかなければならないとお考えでしょうか。
川村:日本は島国なので、経済力が右肩下がりになっていても、中にいるとそれを実感できないように思います。従って、海外との関係を意識して保つことが非常に重要です。そうした中で、外国人の従業員を多数抱える日立は良い事例になれるでしょう。
グローバル化の進展に伴い、本社機能をどこに置くかは、日立を含むグローバル企業にとってますます重要な検討課題になっています。日立について言えば、Lumadaを中心にデータの利活用により新たな価値を提供するビジネスへと切り替えるにあたり、海外で先行事例をつくってきたことは非常に良い流れです。特に2021年に、デザイン主導のデジタルエンジニアリングをリードするGlobalLogic社がグループに加わったことで、Lumadaのグローバル展開が加速しています。
そうした中で、本社機能を日本(東京)に置いておくことが最適解なのか、改めて見つめ直す必要があると思います。今後、北米や欧州がビジネスの中心になるかもしれません。東南アジアの国々やインド、バングラデシュなども急成長してくるでしょう。これら世界中と連携を取ってビジネスを進めていく必要があるため、理想的な形は「自律分散型グローバルカンパニー」ですが、その際にどこに経営の中枢を置いて意思決定をしていくのが良いのかを検討していくべきでしょう。経営中枢が考えるべきことではありますが、自律分散型のグローバルカンパニーの本社機能がどうあるべきか、日立総研でもぜひ考えてみてほしいと思っています。
鈴木:日本か海外か、は本社機能の配置だけでなく、リーダー人材にも通じる重要な問いだと思います。川村さんは社長・会長を経験されてきましたが、どのような人材がグローバルリーダーとしてふさわしいと思われますか。
川村:長期的かつグローバルな視点を持った人材がふさわしいと思います。日立について言えば、日本人の癖や日本のビジネスをよく理解した上で、海外で事業を展開できるような人材です。特に海外の人材は、リスキリングに対しても非常に貪欲です。「私を2年間、海外の会社に派遣してくれたら、こういうことを勉強して帰ってきますよ」と言って、2年分の給料も相手先と交渉して確保する、なんて荒技をやってしまうような人もいます。もちろん、日本人が海外で経験を積むことも非常に重要です。私が経営トップだった2009年当時も、海外で働いていた従業員が東京へ戻ってきて改革に従事してくれて、随分、助けられました。やはり、海外でのビジネス経験はリーダーを育てますし、リーダーを支える人たちも育てるので、従業員にそういった経験を積ませることも意識的にしていかなければなりません。
それから、日本人は慎重に綿密に事を進めるのが得意なので、ビジネスが軌道に乗ってきたら日本人に任せる方がいいかもしれない。一方、案件を固めて走りだすところまでは日本人以外の方が得意かもしれない。さまざまなパターンを経験する中で、いい形が見えてくるのではないでしょうか。
いずれにせよ、特に若い人には英語をちゃんとしっかり勉強しなさい、と言いたい。もう英語はAIでできるなんて言っていると、英語の教科書で勉強している東南アジアの人たちとの差がどんどん開いてしまいます。やはりビジネスシーンにおいて英語は欠かせません。
鈴木:最後に日立総研への期待と若い研究員へのご助言をいただきたいと思います。川村さんは理系のご出身ですが、文理の枠を超えた幅広い教養をいかに獲得し、仕事に活用されてきたのか、ぜひお聞かせください。
川村:幅広い教養、と言われると赤面してしまいますが、私は読み物が好きで、中学生の頃は借りてきた本を夜遅くまで読んで、よく母親に怒られていました。もっとも、難しい本を読んでいたわけではなくて、『トム・ソーヤーの冒険』をはじめとした軽めの読み物です。もう少し年を重ねてからは、司馬遼太郎やトルストイ、ドストエフスキーなどもたくさん読みましたね。
もちろん、大学や会社に入ってからは論文も読みましたが、やはり、文理の枠を超えるというのはものすごく大事なことだと思います。文系の人もテクノロジーの流れに興味を持つべきだし、理系の人も自分たちがやろうとしていることが世の中にどのようなインパクトをもたらすのかを理解しなければなりません。格差問題もカーボンニュートラルの問題も、テクノロジーだけを見て、周りを見ずに突き進んできた結果ですから。
ですから日立総研にも、ぜひ文理の両方に通じながら、世の中に対してインパクトの大きな提言をしていってもらいたいと思います。例えば、冒頭に申し上げたように資本主義のアニマルスピリットを持ちながら、いかに格差をなくしていくのかは一つの重要なテーマです。また、コンピュータ、AIがどこまで進化していくのか、その中で人間にしかできないことは何か、コンピュータと人間の未来というテーマも面白いと思います。このように、文系と理系の人たちが協働して、将来の姿を具体的に描いていってもらえたらと思います。
鈴木:ぜひ、そのように世界をよりよい方向へ導く提言や未来予測に取り組んでまいりたいと思います。本日は長時間にわたり、ありがとうございました。
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日立の「ザ・ラストマン」(最終意思決定者)として、長年日立の経営を担ってこられた川村名誉会長をお迎えし、日立総研の果たすべき役割について対談しました。デジタル社会へと大きく時代が変わろうとしている今、産業構造の変化をしっかり捉えてリスク分析・洞察を行い、格差の是正など社会の本質的な課題に向き合っていくとともに、日立グループの事業ポートフォリオ変革の方向づけに資する提言をすべきとのご助言をいただきました。明治維新、第2次世界大戦後の困難を乗り越えてきた「決心と覚悟」を持って、デジタル変革の本質に取り組んでいきたいと思います。
株式会社日立総合計画研究所 取締役会長 鈴木教洋