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株式会社日立総合計画研究所

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次世代施設園芸団地

所属部署:研究第三部 技術戦略グループ
氏名:片岡 美理

次世代施設園芸団地とは

次世代施設園芸団地は、農産物の生産・加工・出荷・販売、およびそれらの活動を支える設備・機能の集積地であり、工業団地のように効率的な農業運営の実現を目めざす新しい構想として、注目を集めています。

次世代施設園芸団地では、農業生産者以外にも、食品加工業者、商社、卸・小売り、農業機器・資材メーカー、IT事業者などの民間事業者や行政、大学などの研究機関の連携が想定されています。この連携により、栽培に関するノウハウとITやロボットなどの高度な技術を結び付け、質の高い作物の安定的な生産、需給管理の効率化、新たな商品開発など、さまざまな方向に農業運営が発展する可能性があります。
また、生産から出荷・販売までのサプライチェーンの短縮による輸送・貯蔵コストの削減、インフラの共有化によるエネルギーコストの削減と環境負荷の低減、さらに、遊休地活用や雇用創出などによる地域への貢献も期待されます。

オランダをモデルに世界に広がっている

このような施設園芸団地のルーツはオランダにあります。オランダは世界有数の施設園芸先進国です。国土面積は日本の50分の1ですが、世界第2位の農産物輸出国であり、優れた環境制御技術と、収益性の高い栽培ノウハウを有しています。大学を中心に食品関連企業が集積したエリアがあり、フードバレーと呼ばれています。

オランダの技術をベースにした次世代施設園芸団地の造成事業は、既に海外で始まっています。メキシコのケレタロ州に設立されたAgroparkはメキシコ政府主導のプロジェクトであり、オランダ政府やオランダの大学・メーカーも計画に参加しています。Agroparkはそこで生産された農産物の米国への輸出をめざしているため、空港からのアクセスが良い郊外に立地しており、水インフラの無償提供などの営農者支援策が施されています。次世代施設園芸団地の構想は、メキシコ以外にも東南アジアの各国や中東などの新興国でも練られています。

日本における今後の展望

農林水産省は「次世代施設園芸導入加速化支援事業」として予算を計上し、計画策定・検討を支援する補助事業を始めています。事業の計画では、コンソーシアムのマッチングを支援する他、エネルギー供給センター・完全人工光型の種苗供給センター・高度な環境制御を行う温室・集荷施設などの整備、新技術の導入に関わる実証の支援を行うとしています。
次世代施設園芸のようなハイテク農業の弱点として、エネルギーコストの負担が大きいことが挙げられます。今回の農林水産省の施策では敷地内に木質バイオマスなどの再生可能エネルギー発電施設を備え、地域のエネルギーを活用し、化石燃料からの脱却を図るとともに、団地内で資源エネルギーインフラを共有させることでエネルギーコストの削減を可能としています。そうすることで、環境的・経済的に優れた持続可能な営農ができるようにしています。
日本の伝統的な農業は、労働集約的でコストが高く、海外のものと比べて価格競争力が劣るのが現状ですが、営農者が2次、3次産業から参入した事業者とコンソーシアムを組むことで、生産から出荷・販売まで、サプライチェーン全体のコスト削減の可能性が高まります。また、日本国内で培われた高い農業技術やノウハウが、うまく現場で活用されていないという問題についても、農業研究と応用の場を近づけることで、新技術の実用化を促進するなどの効果も期待されます。

政府は日本の農業の未来のため、次世代施設園芸団地以外にも、日本の植物工場技術の海外への売り込みや、農作物の輸出拡大のためのプロモーション活動などに積極的です。 新しい農業のビジネスモデルを確立させて、「攻めの農業」に転換できるのか、今後の発展が注目されます。

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