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株式会社日立総合計画研究所

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企業結合会計

所属部署:国際グループ
氏名:杉山 卓雄

企業結合会計とは

「企業結合会計」とは企業の合併などの際に行われる会計方法で、現在日本では企業結合会計の基準として2006年4月に適用された「企業結合に係る会計基準」が使用されています。「企業結合に係る会計基準」では企業結合の会計方法として「持分プーリング法(Pooling-of-Interests Method)」と「パーチェス法(Purchase Method)」の2通りの会計方法を認めており、「持分プーリング法」では基本的に当事会社の資産、負債、資本の簿価が引き継がれるのに対して、「パーチェス法」では被合併会社の純資産は公正時価により再評価され、取得価格と公正時価の差額は「のれん(Goodwill)」として資産に計上されて20年以内に規則的に償却されることになっています。
会計理論上、「パーチェス法」は企業が別の企業を買収したようなケースに整合的な会計方法であり、「持分プーリング法」は対等な企業同士が合併したようなケースに整合的な会計方法といえますが、それぞれの会計方法を使用した場合では資産・負債などの評価に大きな差異が生じることになります。「のれん」の償却などが必要となるパーチェス法を適用した場合に比べて、「持分プーリング法」を適用した場合には合併後の利益が大きく出やすくなるという性質もあることから、経営者の恣意性を排除するために「持分プーリング法」の適用にあたっては議決権のある株式を対価とすること、支配関係のない合併であることなどの厳格な基準*1によって「持分の結合」と判定されることが求められています。
一方、現行の米国の会計基準や国際会計基準では、企業結合会計として「持分プーリング法」の適用は認められておらず、「パーチェス法」の適用のみが認められています。さらに、「のれん」の償却も行われず、減損が生じた場合には減損処理によって費用化されることになっています。

        
表 各国基準における企業結合会計の会計方法
持分プーリング法
(Pooling-of-Interests Method)
パーチェス法
(Purchase Method)
日本基準 △(2006年4月以降厳格化)
米国基準
国際会計基準
×

企業結合会計が注目されている理由

近年日本でも成長戦略や事業再編のツールとして企業合併・買収が増加しており、企業結合会計の重要性はますます高まっているといえます。しかし、日本の企業結合会計の基準が国際会計基準と異なっていることなどから、欧州連合(EU)は日本の会計基準が国際会計基準と重要な違いがあるとして日本に対して修正を求めていました。EUは2009年までにEU域内で資金調達する外国企業に対しても国際会計基準の導入を義務付ける予定で、国際会計基準と同等と判断されなかった会計基準を採用している企業は欧州での資金調達が困難になる見通しであり、日本企業にとって大きな懸案となっていました。日本企業の国際競争力維持のためにも国際会計基準に合わせて企業結合会計を改正すべきであるという声が高まったことなどから、2007年8月に日本の企業会計基準委員会は、2011年までに国際会計基準審議会(IASB)と会計基準を共通的に同等化することで合意しました。そして、企業結合会計についても「持分プーリング法」を2008年中に廃止し、「のれん」の償却の廃止についても2010年ころに結論を出すという方針を表明しています。

企業結合会計の変更についての考え方

このように日本の企業結合会計の基準は見直される見通しですが、これは国際的な会計基準の統合(コンバージェンス)の流れに合わせざるを得なかったという状況を反映していると考えられます。会計基準の変更は必ずしも「持分プーリング法」が劣った会計方法であったということを意味するわけではなく、対等な企業同士が合併したようなケースでは「パーチェス法」よりも実態に即した会計方法であるとの考え方もあります。もっとも、「持分プーリング法」の適用が厳格化された2006年4月以降の1年余りの間に実際に「持分プーリング法」が適用された事例は3件にとどまるなど、「持分プーリング法」の廃止による影響は限定的であるとの見方もあります。 一方で、会計基準の変更によって将来的に「のれん」の償却が行われなくなることから企業合併・買収が行いやすくなると考える向きもあります。企業結合会計の基準の変更によって生じる差異自体は主に名目的なものですが、会計上の利益がより大きく算定されることにより市場評価や経営者の報酬に違いが生じる可能性もあり、経営者にとって有利に働くとの見方もあるようです。しかし、逆に減損処理によって予定外の損失が表面化する可能性もありますし、毎期の減損評価が必要になることから事務処理などの費用負担は大きいといわれています。 経営者は会計基準の変更によって生じる利益の増減に一喜一憂するのではなく、企業価値全体を見据えながら大局的な視点で価値創造を図っていくことが求められるでしょう。

*1
「持分の結合」の判定基準

次の要件のすべて充たすものは「持分の結合」と判定  (「持分の結合」と判定されなかったものは「取得」と判定)

  1. 企業結合の対価のすべてが議決権のある株式であること
  2. 企業結合後の議決権比率がおおむね等しいこと
  3. 議決権比率以外の支配関係を示す一定の事実が存在しないこと

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