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株式会社日立総合計画研究所

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クラウドサービスブローカー

研究第四部 国際グループ
氏名:松田 洋平

クラウドサービスブローカーとは

クラウドサービスブローカーという言葉が初めて登場したのは2009年のGartnerレポートといわれていますが、その業態は大きく3つに分けられます。第一は、システムインテグレーターとしてユーザ企業にさまざまなクラウドサービスを組み合わせたシステムを構築して提供する業態(以下、SIerタイプと表記)、第二はさまざまなクラウドサービスを集めたカタログサイトを提供する業態(以下、カタログタイプと表記)、第三はカタログサイトを運営するための基盤をクラウドサービスプロバイダーへ提供する業態(以下、イネーブラータイプと表記)の3つです。 SIerタイプは、クラウドサービスを主としたシステムを構築したいユーザ企業に対して、その要件に合致する複数のクラウドサービスおよび既存のオンプレミス(自社運用の意。クラウドに対比して従来の方式を指す)の機能をユーザ企業のニーズに応じて適切に組み合わせた統合基盤を提供する企業を指します。その役割において従来のSIサービスと明確な違いがあるわけではありませんが、対象とする顧客の規模やシステム構築手法、システム構築で課題となる技術、一つのシステムに必要な契約数、サービス提供に至るサプライチェーンとプレーヤー、そしてサービスを担う人材に求められる特性などが従来のSIサービスとは異なるため、クラウドサービスブローカーという新たな呼称を設けて従来のサービスと区別しています*1。 カタログタイプは、さまざまなクラウドサービスプロバイダーが提供しているクラウドサービスを集め、ユーザ企業が自らのニーズを満たすものを自由に選択・契約できるカタログサイトを運営します。また、提供元のクラウドサービスプロバイダーとユーザ企業の間に立って契約や課金の取りまとめ、ヘルプサービスの一括受付などを行います。 イネーブラータイプは、十分な種類のクラウドサービスを持っていなかったり、契約・支払いの機能を持っていなかったりするような場合でもカタログタイプのクラウドサービスブローカー業務を立ち上げられるように、カタログサイト運営のための基盤をクラウドサービスプロバイダーに提供します。

クラウドサービスブローカーを利用する利点

クラウドサービスブローカーを利用する利点はタイプごとに異なります。
はじめにSIerタイプの利点を述べます。クラウドサービスを利用するにはそのサービスが要件に合うかを判断した上で、サービス提供企業と契約を結ばなければなりません。特に、複数のサービスを組み合わせて一つの要件を実現するためには、サービス間の接続性やSLA(Service Level Agreement:利用者に保証するサービスレベル。利用不能上限時間など)の統一、アクセス権の設定なども考慮しなければなりません。その上、契約はそれぞれの提供企業ごとに結ぶ必要があり、事務手続きも煩雑となります。SIerタイプはこれらの作業を一手に引き受け、ワンストップソリューションとして提供します。ユーザ企業としてはクラウドサービスブローカーのみ相手にすればよく、裏側でどのクラウドサービスを選択するかは一任することができます。個別契約を結んでいる場合に起こりやすい、サービスによるベンダーロックイン(ある機能を特定のベンダーだけに依存せざるを得なくなること)を防ぐことにも役立ちます。
カタログタイプの利点はSIerタイプの利点の一部になります。ユーザ企業としては契約や課金を取りまとめてもらえるなど手続きの煩雑さを軽減できる一方で、どのクラウドサービスを選択するかは自ら決定しなければなりません。
イネーブラータイプの利点はリソースの乏しいクラウドサービスプロバイダーでもクラウドサービスブローカー業務を提供できる点にあります。

クラウドサービスブローカーの関連事例

国内のクラウドサービスブローカーの事例としては、経済産業省が事業主体となって構築した中小企業向けサービスのJ-SaaS(2010年6月より富士通が運営、カタログタイプ)が挙げられます。 海外では、SIerタイプとして、Hubspan社(本社シアトル、2000年設立)がクラウドサービスブローカー機能をZORO Tools社に提供した例、Liaison社(本社アトランタ、2000年設立)がMohawk Fine Papers社に提供した例などがあります。カタログタイプとしては、Bank of Americaの提供するSaaSアプリケーション(ネットワーク経由で必要な機能だけを利用するという配布形態で利用可能なアプリケーション)を集めたSolutions StoreというWebサイトが挙げられます。イネーブラータイプとしては、Standing Cloud社が挙げられ、実際にVPS.NET社などが同社の提供する基盤を用いて自社のカタログサイトを展開しています。

国内でのクラウドサービスブローカーの活躍分野

固定費の削減という普遍的なテーマがある限り、今後もクラウドサービスの利用は拡大すると見込まれ、IDC Japanは2011年から2015年にかけてクラウドサービスの国内市場規模は約4倍になると予測しています。その中でクラウドサービスブローカーの活躍分野は、IT投資余力の小さい中小企業の利用、定型業務での利用、イベント対応など一時的に利用する際の基盤となるパブリッククラウドです。変化の激しいIT業界の潮流をキャッチアップしていくことが難しい中小企業を中心に、クラウドサービスブローカーの需要が高まっていくと考えられます。

*1
Gartner “Cloud Service Brokerages Challenge Traditional IT Service Providers for Cloud Services Delivery”

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