日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
世界経済は、足元ではウクライナ情勢をめぐるEU・ロシアの関係悪化により、欧州経済が景気後退に陥るリスクを抱えながらも、
日米経済の成長加速、中国経済の7%台成長維持などにより、13年3.0%から14年3.2%、15年3.9%へと成長率が高まる。
米国経済は、雇用が増勢を強め、家計の債務調整もほぼ完了しており、個人消費、住宅投資の回復が底堅さを増している。
FRBは10月29日の会合でQE3(量的緩和第3弾)を終了するが、15年半ばまではゼロ金利政策を維持し、
金融面から景気下支えを続ける。これらの結果、14年2.2%、15年3.8%と潜在成長率(2.2%程度)を越える成長へ加速する。
ユーロ圏は、各国の緊縮財政政策に加え、ロシア向け輸出減少などによりデフレの瀬戸際にある。
とりわけ、イタリアが08年以降3度目の景気後退に入るなど、南欧諸国では景気低迷が長期化している。
金融面から景気を支えるため、ECBは年内にもQE(量的緩和)を含む追加金融緩和に踏み切る公算が高い。
14年0.2%、15年0.7%とかろうじてプラス成長となるが回復力は弱い。
中国は、4月に実施した投資を中心とした景気対策の効果が息切れし、
住宅価格も5月以降3カ月連続で下落に向かうなど景気減速の兆候が見られる。
政府は、過剰設備や在庫、信用膨張など中国経済のゆがみを抑えながら、
目標とする7%台の成長を維持するため難しい舵取りが続く。
住宅市場抑制策の一部緩和、小型景気対策、金融緩和策など引き続き政策による下支えにより14年7.3%、
15年7.2%と7%台の成長を維持する見通しだが、欧州経済の悪化による輸出急減などのリスクは残る。
新興国の中では、インドが外国投資促進も含め積極的な経済政策を標榜するモディ政権のもとで、
消費と鉱工業生産に回復の兆しが見えており、足元の経済成長率を5%台に高めている(4-6月期)。
新政権は長年の課題である財政健全化とインフラ整備に注力する方針であり、
13年4.4%から14年5.8%、15年6.1%と次第に成長率を高める。
今後の世界経済は二つの大きなリスクを内包する。
第一は、ウクライナリスクで、ロシア軍がウクライナ東部へ2万人規模で侵攻する場合、
ロシアとの経済関係悪化により、欧州経済が再び景気後退へ陥る。
第二は、中国における信用急収縮のリスクで、住宅価格下落がこれまで膨張してきた信用残高を
急収縮させる場合、中国の成長率は7%を割り込む。いずれかのリスクが発現すれば、
影響が世界経済全体に波及し、14年、15年の成長率が13年を下回る可能性がある。
日本経済は、足元4-6月期では消費税率引き上げ後の反動減から前期比年率▲7.1%と大幅なマイナス成長となり、
夏に入っても天候不順により個人消費の回復は力強さを欠いている。
一方、7月の有効求人倍率がバブル崩壊後最高水準まで上昇するなど雇用は改善が進み、
更新需要を中心に設備投資も回復に向かっている。公共事業の早期集中執行もあり14年度後半は成長が加速、
14年度0.6%、15年度1.6%の成長見通しである。賃金、物価の上昇が定着しつつあり、
黒田日銀総裁が掲げる15年のインフレ目標2%達成は可能である。
15年10月の消費税率の引き上げ(現行8%から10%へ)に合わせて投資減税や公共投資など
1兆円規模の景気刺激策が実施されると想定し、15年度も景気回復が持続すれば、
内閣府が14年4-6月期で潜在GDP比▲2.2%と推計するデフレギャップは15年度に解消する見通しである。
注:暦年ベースのため、日本の値は下表の年度ベースと異なる資料:IMF、
予測は日立総研
資料:国民経済計算ほか、予測は日立総研