日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
サブプライム危機は世界の主要金融機関で約30兆円の損失を計上したが、SWFなどから約15兆円資本増強することで、金融市場は正常化は程遠いものの最悪期は脱したものとみられる。しかし、実体経済への影響は2009年まで持続する。さらに、サブプライム危機をきっかけとして資金が金融市場から商品市場へ流入したため、原油をはじめとした一次産品価格が高騰している。世界経済の調整局面は資源・食糧危機へと次の段階へシフトした。原油価格は135ドル/バレル(5/21)まで高騰し、世界的にインフレ懸念が高まってきた。この水準が継続すれば、日米経済の実質GDP当たり原油消費原単位の低下を勘案しても、1979〜80年の第2次石油危機時に近いインパクトがある。食糧価格の高騰は、世界的に途上国で社会不安を招いている。商品市場の金融市場化で、年金資金が商品にも投資される一方で、商品市場は金融市場ほど大きくないため、「小さな池で鯨が暴れている」状況を招いている。中国経済が北京オリンピック後急減速すれば、需給ひっ迫懸念が和らぎ、資源・食糧価格の反転下落きっかけとなりうる。中国経済の行方が世界経済の次の焦点となる。
米国経済は、非農業就業者数が2008年1月から4カ月連続減少を続けるなど、2008年1〜3月期から実質的に景気後退に入ったものと思われる。サブプライム危機は、金融機関の貸出態度の厳格化を通じて2009年まで米国実体経済を下押し続ける見通し。インフレ退治に金融引き締めができる状況になく、スタグフレーションに陥るリスクも残る。米国の2008年実質GDP成長率は1.1%に下方修正(前回予測1.2%)。
EU経済も米国の景気後退の影響を受け減速し始めた。インフレ率は許容水準を上回っており、金融は引き締め方向。EUの2008年実質GDP成長率は1.7%に下方修正(前回予測1.8%)。
中国は2008年1〜3月期10.6%と二けた成長を続けたものの、株価急落や四川省大地震の影響などから不安定感を増している。インフレ率上昇に対応し金融引き締めは強化され、元高も継続している。2003年から続く二けた成長の一けたへの減速は必至。中国の実質GDP成長率は、北京オリンピック後6%台へと急減速し、2008年8.0%と予測(前回予測8.0%)。
一方で、原油など一次産品価格高騰の恩恵を受ける中東やロシアなどの資源国は堅調。世界経済は、2001年のITバブル崩壊時(1.5%成長)ほどの落ち込みはなく、2008年2.5%と予測(前回予測2.6%)。ただし、それは原油価格2008年度平均100ドル/バレルを前提とした標準シナリオ。リスクシナリオとして150ドル/バレルを想定する場合、世界経済成長率は1.4%まで落ち込み、原油価格も乱高下する恐れがある。
日本経済は、原油など輸入一次産品価格の高騰から海外へ所得が流出しており、企業収益と個人所得が下押しされているため、設備投資、個人消費、住宅投資などの内需が弱い。原油など輸入由来のコストプッシュによりガソリン価格をはじめ各種物価は上昇し、消費者物価は2008年度1.4%上昇(前回予測1.0%)。しかし、輸入価格が上昇する一方で、価格転嫁が十分進まず、収益や所得などの付加価値が圧迫される結果、GDPデフレータは2008年度▲0.2%(前回予測0.1%)とマイナスが続き、2008年度デフレ脱却はならない見込み。資源国向けの輸出の堅調は続くものの、内需の弱さを反映して日本経済は景気後退入り。日本の2008年度実質GDP成長率は0.9%へ下方修正(前回予測1.2%)。