日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
世界経済は17年3.4%、18年3.5%と次第に伸びを高め、堅調に推移。日米欧は金融緩和を背景に景気回復が続き、中国も財政によるインフラ投資拡大などに支えられて生産活動が活発化。原油価格の50ドル/バレル付近での安定により資源国経済も持ち直し。一方で、スキャンダルを抱える米トランプ政権への信頼低下、Brexit交渉難航、イタリア銀行危機、ギリシャ債務危機など、金融市場を動揺させるリスクは多い。
17年1-3月期成長率(前期比年率)は自動車販売不振などにより1.2%と一時的に低下したものの、改善が続く雇用環境、シェール関連投資再活発化などを背景に、個人消費と設備投資主導で17年2.1%、18年2.2%と堅調持続。既にほぼ完全雇用水準にあり、FRBは17年3回(3、6、9月)、18年3回利上げ見通しだが、それでも18年末のFFレートは2.25%と依然景気中立的とされる3%を下回る金融緩和状態。税制改革は、財源に予定していた国境調整税を織り込まず、減税規模を公約よりも1/3程度に縮小して18年前半に法制化。インフラ投資促進策は実施されない見込み。減税とインフラ投資への市場期待低下により、FFレートを引き上げても、長期金利(10年物国債利回り)はほとんど上昇せず、ドルは弱含みで推移(17年6月110円/ドル、7月以降105円/ドル、18年107円/ドル)。
英国メイ首相が6月総選挙で勝利し、EU単一市場からの離脱を前提にBrexit交渉に臨む見通し。既にポンド安による購買力低下に伴う消費減速、住宅価格の伸び低下が始まっており、今後金融機関が一部機能を大陸へ移す影響も加わり、17年1.7%、18年1.3%と減速。Brexit交渉期限19年3月末までに合意不成立の場合、英国とEU間貿易はWTOルールに依ることとなるため、交渉が難航すれば、ポンドが急落、経済も急減速の可能性。
ユーロ圏全体では、17年1.8%、18年1.7%と回復継続。ドイツは完全雇用状態で物価上昇が始まっており、ECBに量的緩和早期終了を要求。一方、イタリア、ギリシャなど南欧諸国は依然失業率が高水準。インフレ目標対象とするユーロ圏平均物価は目標(2%弱)からまだ遠く、ECBは17年末まで資産買入れと▲0.4%マイナス金利政策を維持する見通し。
17年1-3月期は、積極的な財政政策によるインフラ投資、製造業の循環的回復、過熱気味の住宅市場により6.9%(前年同期比)と伸びを高めた。17年後半からインフラ投資は息切れ、住宅投資も規制により減速、人民元急落回避と金融リスク抑制のためやや引き締め気味の金融政策の効果もあり、経済は6%台半ばに減速。GDPの約4割を占める消費は堅調で、景気を下支えするため、腰折れの懸念は小さい。
16年度成長率1.3%は外需が寄与度0.8%と主導。原発再稼働による化石燃料輸入減もあり、輸入が0.3%プラスに寄与。17年度以降は、人手不足による賃金上昇が建設、サービス、輸送など中小企業に広がり総雇用者所得と個人消費の伸びが上昇。さらに、16年度経済対策の執行により政府投資が増加。能力増強、省力化意欲が高く設備投資も堅調。17年度1.3%、18年度1.0%と潜在成長率(内閣府推計0.8%)を上回る成長。足元でデフレギャップ(潜在成長力を実際のGDPが下回る状態)はほぼ解消。日銀は金融緩和を続け、需要増により人手不足が続く。賃上げがさらに広がることで、生鮮食品を除く消費者物価は17年度0.8%、18年度1.0%と次第に目標の2%へ近付く。
注:暦年ベースのため、日本の値は下表の年度ベースと異なる
ASEAN5はインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム
資料:IMF、予測は日立総研
資料:内閣府ほか、予測は日立総研