日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
原油価格がこの3カ月で30%超下落。供給面ではシェール革命による米国の原油生産の増加、需要面では高度成長期を終えた中国の減速が背景。
WTI価格は14年12月17日現在55ドル/バレルまで下落しているが、メキシコ湾産原油のコストを下値とみると、
16年まで70ドル/バレル程度で推移と予測。原油だけでなく一次産品全般の価格も下落基調。
さらに、15年6月には米国FRBが金利引き上げを開始する見込みで、これまで新興国へ流入していた資金が反転流出。
世界経済は、新興国主導から米国頼みへ転換しつつ、14年3.2%、15年3.5%と成長。
米国では、個人消費、住宅投資を中心に景気回復が加速。FRBは14年12月17日会合で
「ゼロ金利政策を10月29日から相当の期間(注:半年程度と解釈されている)続ける」との前回会合での発表を再確認。
15年6月金利引き上げ開始の可能性が高い。中間選挙で上下院とも多数派となった共和党も16年の大統領選挙に向け、
債務上限引き上げ拒否のような過激な行動は慎む見通し。経済成長は14年2.3%から15年3.3%と加速。
ただし、所得格差が大きく住宅や自動車への支出には借金が必要な人たちが多く、
家計債務を再び積み上げる形の成長。QE(量的緩和)で持ち上げてきた株価が出口戦略で下落するおそれもあり、
金融リスクは常に抱えている。
ユーロ圏は、14年0.7%、15年0.6%と低成長が長期化。ドイツの反対によりECBの国債購入によるQE(量的緩和)導入は年内は見送られたが、
保有資産1兆ユーロ拡大方針実現のため15年第1四半期には導入される見通し。
しかし、各国の緊縮財政政策は継続されて需要不足が続くため、ECBのインフレ目標2%弱からかけ離れた0%台の低インフレが
続く見通し。欧州委員会が発表した3年間で3,150億ユーロ(約46兆円、年平均GDP比0.8%)
インフラ投資基金も真水が少なく、景気刺激効果は期待できない。15年初にギリシャで総選挙が行われ、
債務再交渉を訴える急進左派連合が政権を握る可能性。その場合、債務再交渉の失敗がユーロ離脱につながり、
連鎖的に欧州金融危機が発生するリスクあり。
中国経済は、14年7.3%から15年7.0%、16年6.8%と持続可能な安定成長へ向けて減速続く。
住宅価格が5月以降6カ月連続で下落し不動産関連投資が低迷する中でも、
政府は大型の景気刺激策を行わない方針を維持。人民銀行による金融緩和や住宅市場抑制策の一部緩和、
小型景気対策で下支えはするものの、成長率低下は容認。信用急収縮のリスクを抱えながら、
金融の自由化を進める難しい舵取り。
日本経済は4-6月期▲7.1%、7-9月期▲1.9%と2四半期連続のマイナス成長。14年4月の消費税率引き上げによる実質所得減少の結果、景気後退に陥った。
ただ、在庫調整の進展から14年8月に谷を打ち景気回復局面にあるとみられる。
14年10月31日日銀追加緩和、11月18日消費税率引き上げ延期(17年4月まで)決定を受けて、
12月17日までに(14年度上期平均比で)円安が12%(104→117円/ドル)、
株高が13%(日経平均1万4,790円→1万6,800円)進行。また、原油安と原発の一部再稼動が鉱物性燃料輸入額を約3兆円減らし、
その分減税と同じ効果。15年度の成長率は円安・株高で0.4%、原油安・原発一部再稼動で0.2%押し上げられる。
日本経済は14年度▲0.5%から15年度1.9%へ加速。
14年12月14日の衆議院選挙でも与党(自民党と公明党)で3分の2超の議席を確保した安倍首相は、
17年4月に消費税率引き上げが可能になる環境を作り上げるため、高水準の公共事業継続、法人税率の引き下げ、
企業への賃上げ要請などの景気刺激策を続ける見通し。
短期間だが景気後退の結果拡大したデフレギャップからの再スタートとなるため、インフレ目標2%達成は15年度は困難だが、
16年度にはデフレギャップ解消とともに達成しよう。
注:暦年ベースのため、日本の値は下表の年度ベースと異なる資料:IMF、
予測は日立総研
資料:国民経済計算ほか、予測は日立総研