日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
猛烈な嵐を思わせた09年1-3月の各国景気の「急落局面」はどうやら過ぎた。懸命な在庫調整がようやく需要の急減に追いついた面が強い。そして4月のG20金融サミットでは各国協調して金融・財政政策を打ち出した。金融市場の過度な悲観も後退した。これらを受け、全てが順調に回復過程に入るとの期待が高まり、株価も2月を底に上昇してきたが、果たしてそうか。今回の予測の見方は、前回の見方と基本的に同じである。L字回復、製造業は7割経営を強いられる。すなわち、回復の道は長く険しくそして起伏の多いものになると予想している。場合によっては二番底を見る可能性も排除できない。回復とは言えないこうした過程を「修復局面」と呼ぶことにした。
景気の急落局面が残した傷跡は深い。米国では、雇用減少幅は縮小傾向してきたものの、今次不況での失業者は累計643万人にのぼる。住宅価格は下げ止まらず、家計の過剰債務も正常化には程遠い。金融機関の不良資産処理も最悪期を脱したとみるには早計である。その結果、米国経済はあと数四半期マイナス成長を続け、実質GDP成長率は09年▲3.0%、10年0.6%と見込む。欧州は、米国より不良資産の処理の遅れが顕著。また、ドイツは域内輸出の急減で日本並みの経済縮小に見舞われている。EU全体で09年▲4.3%、10年0.3%と予測。他方、中国とインドは鈍化したとはいえ、5〜7%の高い成長を維持。世界経済は10億人の先進国経済のマイナス成長を24億人の中国・インドなど新興国経済がカバーし、09年▲1.5%、10年1.8%と予測。
日本経済は、製造業では軒並み操業度が7割前後からの修復過程となる。在庫適正水準までの生産回復は見込めるものの、その後の需要増加は不透明である。外需は新興国市場に期待だが、内需は厳しい。低い企業収益と設備稼働率から設備投資は期待できない。更に、雇用調整の本格化と給与・賞与の削減による個人所得の減少は、定額給付金の支給分を軽く上回る。個人消費は減少せざるを得ない。政府の15.4兆円の経済危機対策も年後半の経済を支えられるか不安が残る。日本経済も、急落局面は去ったとはいえ、このまま景気が上向くとは言えず、再び在庫調整を強いられる可能性もある。日本経済は、09年度を通して低水準で、起伏の多い厳しい修復過程をたどると予想される。景気回復を感じられるのは10年度後半となる。実質GDP成長率は、09年度▲5.2%、10年度0.5%と予測。前提となる為替レートは、09年度 95円/ドル、120円/ユーロ、原油価格は50ドル/バレルと予測。
各国が大型の景気対策を打ち出す中で注目すべきは、大不況の時だからこそできる大型インフラ投資である。いわゆる「賢い財政支出」の競演である。1930年代の大恐慌時のテーマが「高速道路網」や「電力網」の整備だったとすると、今回は「グリーン革命」がメインテーマと言えよう。こうして次世代の社会基盤が創造され、将来の経済成長が確かなものとなる。今後そうしたプロジェクトが世界で進展する。今回、日米の景気対策の中で、日立グループに関連するプロジェクトを抜き出してみると、日本で約5兆円、米国で26兆円。大不況の中で技術革新が起こり、最大のビジネスチャンスが生まれようとしている。