日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
大恐慌並みのペースで進んできた世界経済の急降下は、09年4〜6月期にようやく下げ止まった。生産がアジア各国で反転する一方、実質GDP成長率は、中国が前年比7.9%と復調し、ドイツが前期比年率1.3%、日本も同3.7%とプラスに転じた。米国も依然マイナスながら同▲1.0%と、前期から大きくマイナス幅を縮小させた。
こうした足元の経済指標をよく見ると、いずれも各国の景気対策によるところが大きいことがわかる。果敢な超金融緩和策に加え、自動車購入補助策や公共投資などの財政支出拡大の効果である。各国の輸出改善も中国向けが中心だが、それも「4兆元景気対策」や家電購入補助策などが寄与している。一方、民間需要は、特に先進国では、雇用・所得環境の著しい悪化のため個人消費が低迷し、稼働率の歴史的低下から設備投資も大きく意欲が減退している。すなわち、各国とも景気対策依存で反転したぜい弱な景気状況にある。
その背景には、欧米金融機関の危機的状況は回避したとは言え、各種ローンの延滞率は上昇を続け、貸し渋りが続いていることがある。わずかなショックで2番底に陥るリスクは常に存在している。そのため、回復力は極めて弱く、デフレ圧力が強い基本的構図は依然続いている。経済がプラスで推移しても、雇用・所得の回復に時間のかかる修復局面は10年半ばまで続く見込みである。しかし、この間も世界の産業構造は激しく変化していく。
米国経済は、7〜9月期には前期比プラスに転じると見込まれ、「借りて消費する」経済から「貯蓄して投資する」経済に正常化していく。09年成長率▲2.8%、10年1.3%を見込む。欧州はドイツなどが一部先行回復するが、EU全体で09年▲4.1%、10年0.3%。他方、中国は09年で政府目標の8%成長を維持できるとみられる。インドの内需も底堅い。したがって世界経済全体の成長率見通しは09年▲1.2%、10年2.2%と若干上方修正。
日本経済が辛うじて下げ止まる中、8月30日の衆院選で民主党が圧勝。戦後初の本格的政権交代となった。「子ども手当」に代表されるように、これまでの企業サイドに寄った経済政策から家計サイドに寄った経済政策へと大きな転換が図られる見通し。当面、一部公共事業執行停止などによる影響も予想される。国内需要は、公共投資受益型産業から家計向けサービス産業などへ一段とシフト。また、10年度の予算成立が遅延すれば、元来弱い景気が腰折れ、2番底のリスクもある。外交・通商政策の変化や円高リスクにも留意要。
もう一つの注目点は地球温暖化対策である。2020年90年比温暖化ガス25%削減という目標が掲げられている(自公政権は90年比8%削減)。グリーン需要誘発など環境市場にはプラス面もあるが、目標が高すぎて経済が抑制される恐れもはらむ。
足元の経済は、中国向け輸出が回復している上、公共事業増などの景気対策効果も想定よりやや強めに出ており、前回予測から上方修正。ただし、雇用・所得環境の悪化や設備投資の大幅な減少など民間需要は弱く、当面は景気対策頼みの状況は不変。新型インフルエンザの流行もマイナス要因。09年度の実質GDP成長率は▲3.3%(上期前年同期比▲6.1%、下期同▲0.5%)。10年度は0.7%と予測。前提となる為替レートは、09年度下期以降、95円/ドル、130円/ユーロ、原油価格は60ドル/バレル。