日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
米国、日本を中心に先進国経済は14年1.8%から15年2.3%へと成長加速する。一方、新興国経済は14年4.6%から15年4.3%へと成長率を下げる。米国FRBのゼロ金利解除による米国への資金回帰と原油などの資源安は、新興国には逆風。産油国のベネズエラ、ロシア、サウジアラビア、資源国のブラジル、紛争当事国のウクライナ、政情不安定なアルゼンチンなどは15年マイナス成長に陥る。
米国は、14年2.4%から15年は潜在成長率(2%台半ば)を上回る3.3%へ加速。雇用状況の改善が続いており、15年半ば以降にFRBはゼロ金利を解除する見通し。インフレ目標とする2%を下回る状況下で、その後の政策金利引き上げペースは緩やか。緩和と引き締めの境目になる政策金利4%を超えるのは17年以降で、16年までは金融緩和が回復を後押し。
ユーロ圏は14年0.9%、15年1.0%と各国ともプラス成長だが、緊縮財政継続により内需が低迷。需要不足からインフレが低下する中で、ECBが3月から国債購入によるQE(量的緩和)を開始。QEが招くユーロ安で、ユーロ圏外の国に対する輸出競争力を高めてユーロ圏全体がドイツ同様の輸出主導型経済成長を図る形。しかし、QEでは共通通貨ユーロを使うギリシャなど南欧諸国がドイツに対して輸出競争力を回復できず、南欧諸国ではデフレ圧力続く。
中国経済は、14年7.4%から15年6.9%と減速が続く。習指導部は大型景気刺激策を行わない方針を堅持しており、3月全人代でも15年成長率目標を7%前後とした。同時に、2月25日に零細企業向け減税、水関連公共投資の認可加速などの小型景気対策を発表し、3月1日には政策金利を0.25%引き下げるなど、景気の下支えを図る。今後も、政策金利と預金準備率の引き下げ、小型景気対策の追加を続ける見通し。
今後の世界経済には4つのリスクがある。?原油価格が現状の50ドル/バレル程度からさらに下落して産油国のデフォルトが相次ぐリスク(上記予測では、15年後半にサウジアラビアなど湾岸諸国が減産に踏み切り70ドル/バレル程度へ戻すと前提)、?ウクライナとロシアの紛争が激化し、ウクライナがデフォルト、欧州経済が下押しされるリスク、?ギリシャが6月末までの債務再交渉に失敗してユーロ離脱に追い込まれ、それが欧州金融危機の発生へと連鎖するリスク、?中国で信用が急収縮し、経済が急減速するリスク、の4つである。これら4つのリスクは、相互に関連し、一つでも現実化すると、先進国経済にも波及し欧州などは再び景気後退に陥る。
日本経済は14年10-12月期前期比年率2.2%と2四半期連続のマイナス成長からプラス成長へ復帰。内需最終需要の回復は鈍いが、景気は回復局面にある。鉱工業生産は電子部品・デバイスに加え、一般機械や電気機械などが増加、15年1月以降回復が加速する見通し。輸出数量も米国向けを中心に増加傾向が顕著となってきた。原油安もあり貿易赤字は縮小。人手不足の広がりを背景に、15年春闘は高めの要求で名目賃金は伸び率を高める見通し。消費税率引き上げが延期されたことに加え、原油安で消費者物価の伸びが下がるため、15年度実質賃金は4年振りにプラスの伸びとなり、株高とともに、個人消費の回復を支える。円安・株高、原油安などの追い風効果がようやく現れ、日本経済は14年度▲0.8%から15年度1.9%へ加速。
エネルギーを含む消費者物価指数(生鮮食品を除く)を目標指標として、2%インフレを目指す日銀にとって原油安は短期的には逆風。15年度インフレは0.1%の見通しで、インフレ目標達成は困難。16年度には、原油安を追い風とした15年度以来の高成長によりデフレギャップが解消することに加え、原油価格の底打ちがプラスに寄与する結果、インフレ目標2%は達成される見通し。
注:暦年ベースのため、日本の値は下表の年度ベースと異なる
資料:IMF、予測は日立総研
資料:国民経済計算ほか、予測は日立総研