日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
世界経済はリスクを抱えながらも緩やかに持ち直しつつある。それを支えているのは、先進国の金融緩和の維持・強化である。米FRBはQE3まで量的緩和を踏み込み、欧州ECBはLTRO(3年物長期資金供給オペ)からOMT(無制限国債買取プログラム)まで進めた。そして日銀も、安倍政権下でようやくインフレ目標を2%に設定し、デフレ脱却を目指した大胆な金融緩和方針を打ち出した。これに市場は円高是正と株高で反応し、回復期待が動き出している。G20で「通貨安競争の回避」を確認する一方で、欧米中央銀行総裁から政策への支持も得た。一方、新興国経済は、中国が成長鈍化に歯止めをかけつつあり、インドやブラジルなどは12年に低下した成長率から13年は反転するものの、成長ペースは緩やか。
世界は今、景気回復を維持しながら長期的財政状況を改善する段階に入り、各国政府の政策手腕が試されている。ここでも世界をリードしているのは米国といえる。昨年末の「財政の崖」は富裕層の増税など一部が発効するだけで乗り越えたものの、3月1日に延期した歳出自動削減は与野党の妥協が不調に終わり発効してしまった。今後、景気下押しの影響が予想されるが、これで米国景気が腰折れする気配はない。確固とした金融緩和維持政策への信頼と住宅市場の底入れなど実体経済の改善が明確になっているからである。
一方、欧州は、財政赤字削減を優先するあまり緊縮政策の行き過ぎから実体経済はマイナス成長に入っている。イタリアの総選挙に見られるような政治的混乱から欧州危機再燃の不安定さを残す。中国も、金融危機時の4兆元の景気対策から生まれた不良債権や過剰生産体制などがさまざまな経済構造の歪みを生み、その改革に苦慮している。各国の中国への対内直接投資の減少はそのリスクの度合いを示唆している。
13年の世界の実質GDP成長率の予測値は、世界全体が3.4%と前回予測から0.3%下方修正だが、12年の3.3%からは小幅上向く。13年の米国は1.7%と前回予測より0.6%下方修正。13年前半に給与税増税や歳出自動削減などから下押しされるが、後半以降成長は加速すると見込む。ユーロ圏経済は、13年▲0.6%、14年▲0.2%と、12年から3年連続マイナス成長の見方は変わらない。新興国経済は5.5%と、前回予測より0.2%下方修正。中国7.8%、インド5.6%、ブラジル2.3%など、各々下方修正。
日本経済は、昨年末から海外経済の持ち直しにより生産活動が上向いてきた。これにアベノミクスの第1の矢である大胆な金融政策への期待が加わり、円高修正と株高が生じている。問題は、この期待が現実となるかである。第2の矢である機動的な財政政策は、13年度の実質GDPを0.8%程度押し上げるとみる。しかし、第3の矢の成長戦略が現実に効果のあるものとならなければ、景気の好循環は続かない。そういう意味で、TPP参加や規制改革の実効性がアベノミックスの成否を握っている。少しでも隙があれば、金融市場から財政規律の緩みを衝かれるリスクが付きまとう。
実際に国内の需要が盛り上がりインフレ率が上昇するには時間がかかる可能性がある。製造業は既に空洞化が進み、国内生産増加も貿易赤字縮小も限定的であろう。円安による物価上昇はあっても、労働需給ひっ迫から賃金上昇には時間がかかる。しかし、株高など資産効果による消費増や消費税増税前の駆け込み需要は直ぐに期待できる。 13年度の実質GDP成長率は、2.3%と0.5%上方修正。為替は90円/ドル、115円/ユーロ、135円/ポンド。原油価格(CIF)は114ドル/バレルを想定。
注:暦年ベースのため、日本の値は下表の年度ベースと異なる資料:IMF、
予測は日立総研
資料:内閣府、予測は日立総研