日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
世界経済の状況は一段と深刻になってきた。欧州債務危機の長期化により、世界の欧州向け輸出は減少が続き、生産が低迷。また、世界のマネーも南欧諸国から日米独にシフトし、かつ縮小している。ここに来て、新興国経済への影響が顕著になってきた。特に中国経済は、欧州向け輸出の減少から国内の過剰設備が顕在化し、鉄鋼や基礎資材などに世界的需給緩和を生み出している。世界の工場としての中国経済は屈折点を迎えた。このため、世界的再編が一気に進む産業も出てきた。一方、米国経済は過度の悲観は後退しているものの回復基調は依然弱い。日本も輸出減から生産が頭打ちである。また、新たに世界の異常気象から穀物の商品相場急騰という難題も出てきた。
各国金融当局への一段の緩和期待が高まっているものの、効果的な手が打てないでいる。世界経済は、金融危機以来の景気後退の瀬戸際にいる。
危機の震源地である欧州では、緊縮財政の緩和の方向性には合意したものの具体化の足取りは重い。さらに金融市場の安定や財政統合の合意には程遠い。その間にも実体経済の悪化は進み、この秋にもユーロ維持は危うい局面に直面する可能性がある。
米国では、11月6日の大統領選挙で経済が焦点となる。また、減税など諸策が失効する12年末の「財政の崖」が回避できなければ緊縮財政となり、13年の米国経済は景気後退に陥る。本予測は回避するとみているが、大統領選挙と共に両院議会選挙次第では不測の事態も頭の片隅に置いておく必要がある。
日本では、消費税増税法案が成立し、財政規律維持の姿勢を見せて市場混乱を回避したものの、その後は政治不全に陥っている。この秋にも予想される解散・総選挙後も政治の混乱は続く見込みで、エネルギー政策やTPPなどの課題山積の中、「決められない政治」は日本経済の深刻なリスクとなる。
新興国経済も深刻化する景気減速への経済運営能力が試される。特に、この秋に実質的に政権移行する中国では、経済構造転換の困難に直面している。経済発展に応じた適切な金融制度と積極的財政政策が重要となる。新体制の経済政策が注目される。
このような世界経済を実質GDP成長率で表すと、12年は3.1%と、前回予測と同様となった。米国経済2.1%、ユーロ圏経済▲0.7%とも見方は変わらないが、新興国経済が5.0%と、前回予測より0.1%下方修正。中国7.8%、インド5.8%、ブラジル1.4%など、各々下方修正した。
日本経済は、輸出の減少から生産活動は停滞してきた。しかし、内需は復興関連の公共投資と、防災や再生可能エネルギー固定買取制度関連などの設備投資で底堅い。家計も、消費税増税の駆け込み需要やシニア消費の増加から堅調見込み。底堅い内需を背景に、海外直接投資は本年度も大幅増加基調でグローバルな生産体制への再編が進む。13年度にはデフレ脱却に近づくと予想。
12年度の実質GDP成長率は、2.1%と0.1%下方修正。為替は80円/ドル、98円/ユーロ、118円/ポンド。原油価格(CIF)は111ドル/バレルを想定。
資料:IMF、予測は日立総研
資料:内閣府、予測は日立総研