日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
2008年9月の金融危機から4年3カ月経過した。1930年代の大恐慌当時と比べれば、緊縮財政を強行した英国などは大恐慌より悪い一方、不十分ながら景気刺激ができた米国などは大恐慌の再来は回避できた。2012年、欧州や日本は景気後退に陥ったが、世界経済全体では景気後退は避けられそうだ。欧州債務危機は、欧州ECBの思い切った金融緩和策やギリシャの財政再建目標の緩和などにより落ち着いてきた。日本経済の景気後退も底は浅そうだ。また、金融危機の震源であった米国経済は、緩やかながら雇用改善が継続し、過剰家計債務調整の先が見えてきた。中国経済も成長率鈍化に歯止めがかかりつつある。
したがって、2013年の世界経済は上向くものと予想される。世界経済の実質GDP成長率は、12年3.3%、13年3.7%、14年4.0%と予測。しかし、リスクもいろいろある。米国には「財政の崖」。中国には、高成長の中で生じた歪みが経済・金融・社会の各分野で顕在化するリスク。これらのリスクが回避できれば、米国は、各年2.2%、2.3%、4.4%と13年後半から回復ペースを上げ世界経済をけん引。ユーロ圏は、▲0.5%、▲0.5%、▲0.2%と3年連続マイナス。中国は7.7%、8.1%、7.6%。日本は1.9%、1.9%、0.8%(年度では1.1%、1.8%、0.8%)と予測。
21世紀に入り、世界経済は、中国、インドなど人口大国が次々と経済成長に離陸し急拡大してきた。この新興国の成長トレンドは2008年の金融危機を乗り越え2020年まで続き、2030年に向け人口の高齢化と為替高により鈍化しながらも比較的高い成長が続く。その原動力は、新興国の中所得国化である。1990年には1,000ドル(2010年価格)以下の低所得国が世界人口の64%だったのが、2030年には9%となり、ほとんどが中所得国78%の中に入る。 こうした動向は世界貿易を新興国中心にシフトさせていく。また、世界で100〜500万人都市を97、500万人以上の大都市を18生む都市化も成長を促進させる。一方、地球環境問題は深刻化。CO2削減による2100年の地球温度2℃上昇への抑制目標は無理で、現状では3〜4℃上昇となるが、これによる水不足や穀物価格の上昇は成長を抑制する。 世界の実質GDP成長率は、金融危機の後遺症が残る2010年代前半が3.8%、その反動が期待される後半が4.3%、そして2020年代の10年は3.6%と予測。これをけん引するのは新興国経済で、同5.6%、5.4%、4.6%。中でも中国は、同8.0%、6.5%、4.5%。また、シェールガスなどイノベーションで成長が期待できる米国も、同3.1%、3.7%、2.5%と2010年代後半は世界経済をけん引。
日本の労働力人口は、人口の高齢化が進み、女性や高齢者の労働参加率が高まったとしても減少せざるを得ない。残る経済成長の源泉は、資本力と全要素生産性だが、特に技術革新や規制改革など、イノベーションに期待がかかる。それを加味しても、日本の潜在成長力は1.0%〜0.8%となる。 こうした低成長経済化に伴う構造変化は大きい。産業構造は、製造業の空洞化が進み、2030年にはサービス産業就業者の構成比が41%に拡大。財政赤字削減については、急増する社会保障費を賄うためには、2020年までに消費税率を15%まで引き上げる必要がある。また、高齢者層の増加で日本の貯蓄率はマイナスとなり、住宅需要も減少。そのため、経常収支は2020年代半ばには赤字となる見込み。ただし、その速度は海外からの所得収入の増加で幾分緩和される。その海外所得も加味した国民総所得(GNI)も重視する必要がある。実質GDP成長率は、2010年代前半1.1%、後半1.0%、2020年代0.8%。円の対ドルレートは、現状の歴史的円高が90円へ修正された後、横ばいとみた。