日本・米国・欧州・中国など、世界の主要国・地域の最新経済予測
日米で景気回復が堅調さを増し、世界経済の回復続く。世界の実質GDP成長率は、2013年3.0%から2014年3.4%へ高まるものの、
新興国経済は2013年4.6%、2014年4.7%と停滞。本予測の標準シナリオではロシアはウクライナ東部へ軍事介入しないとみるが、
それでもウクライナ向け天然ガス供給が夏に停止する見通しで、ウクライナ経由のパイプラインでロシアから天然ガスを輸入している東欧では
エネルギー不足に。西側による制裁が限定された部門(ハイテク機器など)のロシア向け禁輸まで強化され、
ドイツ、イタリアなどはロシア向け輸出減の打撃を受ける。リスクシナリオとしては、ロシアがウクライナ東部へ軍事介入、
西側とロシアの貿易・資本取引が停止、ドイツが先導する欧州経済の回復が腰折れすることも想定しておく必要がある。
タイでも軍事クーデターが長期化し、抗議デモが拡大した場合には、サプライチェーンの寸断により、
自動車や電子機器などのグローバル生産が滞るリスクがある。
米国は、投資の堅調もあって雇用の増勢が強まっている。2014年1〜3月期は前期比年率▲1.0%と寒波の影響からマイナス成長となったが、
4〜6月期以降回復が加速する見通し。FRBは4月30日の会合でもQE3(量的緩和第3弾)による資産購入額の100億ドル減額を継続。
10月29日の会合で量的緩和終了後も、2015年前半まではゼロ金利を継続する見通しのため、長期金利は低位安定、ドル高を回避。
住宅市場の回復が経済全体の加速に寄与。
ユーロ圏は、ECBが2014年6月5日理事会で金利引下げなど一層の金融緩和を進める見通しで、
その支えもあって2014年0.2%と全体では3年振りにマイナス成長から脱する。2014年1〜3月期は
4四半期連続のプラス成長(前期比年率0.8%)となったものの伸びは鈍化(2013年10〜12月期は同1.1%)。
ドイツは同3.3%と高成長だったのに対し、イタリア、ポルトガルはマイナス成長。南欧諸国では景気低迷が長期化する見通し。
中国は、2014年7.3%と2012、2013年の7.7%成長から伸び率は下がるものの7%台の成長が持続。3月の全人代で2014年成長目標を7.5%前後とするなど、政府は構造改革を優先しつつも景気の急減速は防ぐ方針。7.2%を下限とした政策運営を目指しており、外的要因による景気後退を避けるため、4月2日には鉄道建設加速、都市部バラックの改造加速、零細企業への税制優遇の延長などの小型景気対策を発表。
インドは、2014年5.2%、2015年6.3%と次第に成長率を高める。2014年5月16日総選挙結果でインド人民党(BJP)が単独過半数を占め圧勝。今後の経済成長への期待感から、株価は上昇し、2013年5月以降急落していたインド・ルピーも反転上昇。モディ新首相の公約(雇用創出、海外直接投資の誘致、インフラ整備など)はBJPが政権を握る北部の州から実現が進む。
日本経済は、2014年1〜3月期前期比年率5.9%と5四半期連続のプラス成長で、4月消費税率引き上げ(5→8%)を前にした個人消費の駆け込み需要もあって高成長。企業収益の回復を背景に設備投資の増加も貢献、景気回復に勢い。4月以降個人消費は1997年増税時と同程度反動減も、公共工事の執行前倒しなどもあり景気は腰折れしない見通し。失業率や有効求人倍率は2008年の金融危機前の水準まで回復しており、ほぼ完全雇用に近づいている。建設など一部業種では既に人手不足。内閣府は駆け込み需要で押し上げられた2014年1〜3月期のGDPギャップを(潜在GDP比)▲0.3%と推計しており、景気回復継続により、2015年度にはデフレギャップは解消の見込み。賃金、物価が上がりやすい体質になりつつあり、黒田日銀総裁が掲げる2015年に2%のインフレ目標達成は可能。
注:暦年ベースのため、日本の値は下表の年度ベースと異なる資料:IMF、
予測は日立総研
資料:国民経済計算ほか、予測は日立総研