研究員お勧めの書籍を独自の視点で紹介
2007年2月20日
ビジネスリーダーに求められるのは、組織力を最大化し目標を達成することである。組織は人材(=メンバー)から構成され、メンバーの組織への貢献を最大化することが、組織の成果を最大化することに直結する。メンバーの組織への貢献を最大化するには、メンバーのスキルを上げることはもちろんであるが、メンバーのモチベーションを高めることが重要となる。
本書は、組織力の最大化を使命とするビジネスリーダーに向け「適切なリーダーシップを発揮するための30原則」を記した指南書である。筆者は、メンバーのモチベーションに着目した企業変革のコンサルティングを専門としており、その経験上、メンバーのモチベーションを高めることを主な切り口として記すことで、これらの原則を、より実践的なものとしている。
本書では、モチベーションをマネジメントし、高めていく手法がさまざま紹介されている。筆者は、各手法を紹介するだけではなく、それぞれの手法を成功させるためには、ビジネスリーダーが常に「メンバーのモチベーションをマーケティングする」という視点を持つ重要があると指摘している。つまり、メンバーが組織に対して「何を求めているのか」、「何に満足しており、何に不満を抱いているのか」という、メンバーのモチベーションの方向や強弱の状態を、探索し把握することが、重要であるということである。
「かつての日本企業は、年功序列や終身雇用という仕組みにより『組織への忠誠心』を社員から引き出すことが容易であり、社員のモチベーションの状態など把握する必要がなかった」と本書は記している。組織に所属して働くことの目的が、主に日々の糧を得ることであった時代は、会社が用意してくれている、年功序列や終身雇用など、「将来を保証する」という画一的な刺激によって、メンバーのモチベーションを一定レベルまで高めることが可能であった。このような時代においては、ビジネスリーダーにとって組織運営は、現代よりは容易であったであろう。
しかし、そのような時代は終わり、現代は「日々の糧を得ること以上の何か」、つまり、自分がその仕事をする意義や、その組織に所属する意義などを深く考える豊かな時代となった。将来を漠然と保証されるより、今、この時を、どのように充実させるのかということに重点が移り、今を充実させるために、組織から組織へ人材が流動する時代である。このような時代においては、メンバーのモチベーションを高める効果を、今までのように、年功序列や終身雇用という画一的な刺激に期待することはできない。そこで、メンバーのモチベーションをマネジメントし、高めていく際に、マーケティングという視点を持つことが有効であると、筆者は主張する。
マーケティング、すなわち、企業が顧客のニーズを探索するように、ビジネスリーダーがメンバーのモチベーションの状態を探索し、それぞれに適合した刺激を与えることによって、それらを的確に高めていくことが可能になると、筆者は提唱する。
メンバーのモチベーションの状態を探索して把握し、それぞれに適切な刺激を与えれば、メンバーのモチベーションを高めることに資する。本書に述べられていることは、優れたビジネスリーダーであれば、潜在意識の中では理解していたことかもしれない。本書はそれを「モチベーションマーケティング」という言葉で、ずばりと整理してくれており、一読に値する。