研究員お勧めの書籍を独自の視点で紹介
2007年6月10日
本書は起業や独立をサポートするドリームゲート社のビジネスを紹介した連載の中から一部を取り上げ再編したものである。本書には、安定した地位を捨てて起業した17人の起業家が登場する。さまざまな背景を持った彼らがビジネスを立ち上げた後、どのように成功をつかんだかに関して、多くの事例を紹介している。
53歳で起業する人は少ない。起業したとしても、長くサラリーマンとして会社勤めをすると、ゼロから立ち上げるビジネスに疎く、新会社の体力が持たず途中で断念するケースがほとんどである。また、同じ新興航空会社であるスカイマーク、エアドゥ、スカイネットアジアが3社とも厳しい経営を強いられるという航空業界逆風の中、"絶対に成功させてみせる"という揺るぎ無い信念のもと、彼は起業をした。飛行機の運航システム・機体研究という自らの経験に加え、市場分析力、経営力、実行力、あっせん・交渉力といったスキルを駆使することにより、彼はさまざまな困難をクリアしたのである。
堀氏は、経営者としての優れた資質を持っていただけでなく、自分に対する自信やNothing is impossibleとの考え方を持ち、明確な目標とビジョンを定めてから着実に実行する行動力によって、成功を勝ち取った。
事業スタート当初は、アウトソーシングしたシステムへの予想以上のアクセスによるシステムダウン、ユーザーや業者への対応など、多くの困難に直面した。また、大企業であれば秘書に任せられた雑務などもすべて社長自らこなさなくてはならなかった。しかし、こうした苦労が報われ、松本氏は2001年5月に、米経済誌「フォーチュン」で「次代を担う世界の若手経営者25人」の1人に選ばれている。
松本氏の事例を見ると、体力、気力を充実させて時間をかけて勝負し、他人任せにすることなく自ら行動し細部への配慮も怠らないことが、起業家にとって重要であることに気付かされる。
堀氏は、「残りの人生で何を成し遂げたいのか?それが分かれば無限大のパワーが湧いてくる」と言う。彼自身、米国ハーバード大学経営学大学院修士課程修了(MBA)後、わずか80万円の資本金でグロービスを設立し、一歩一歩成功に向かってきた。「起業する前に、自分の残りの人生を通して何を成し遂げたいのか、そういった個人に与えられた使命や任務を考えてほしい。それがわかると、無限大のパワーが湧いてきますし、やらなきゃならないとなると方法論を必死で考えるようになりますから。それもお金など私欲を肥やすことではなく、よりすばらしい社会を実現するために、社会の問題を解決するために、自分の能力を最大限に発揮できることは何なのか」。原動力(モチベーション)が堀氏を成功に導いたとも言える。
堀氏も当然起業の初期段階から、さまざまな難題に直面していた。評者は下記の三つのことを思い出した。一つ目は、企業の体力維持。本書のすべての経営者も起業後、しばらくは黒字にならない状態を経験している。会社の体力がどれくらいかは事前に十分に知らなければならない。すべてを悲観的に見る必要はないが、最悪の場合も覚悟しておかなければならない。二つ目は、リスクコントロール力。起業家は、高度なリスクコントロールが求められる。起業家たるもの、スポンサーへの返済、突発的に発生するトラブルへの対応、創業株主との利権争い、ライバル対策など、あらゆるリスクをコントロールする力がないと務まらない。三つ目は行動力。「考えすぎるのはよくない。大胆に行動する」。夢を明確にしたうえ、スピード経営を重視している。"チャンスの女神は前髪しかない(チャンスはつかめる時にスピーディにつかむべき)"。
本書を読めば読むほど「挑戦」という言葉への理解が深まる。本書には「挑戦」する上で必要不可欠な実行力、気力、リスクコントロール力など、実ビジネスにおいて起業家に求められる様々な要素が実例を通して書かれている。人は、ビジネスにおいても、また、人生においても、常に「挑戦」することが求められる。起業をするうえで、まず重要なのは、私にはできないだろうという考えを完全に捨てさることである。そして、今はともかく、将来は自分の夢が実現できると信じることで、視野は全く変わってくる。ビジネスにおいては失敗も成功もあることは当たり前であり、挑戦しないことには結果もわからない。本書は、成功を目指すには、まず挑戦することが肝心であるということを改めて思い起こさせてくれる。